鳩山由紀夫首相が国会で「朝三暮四」の意味を質問されて、「朝決めたことと夜決めたことがすぐ変わるという意味」と答弁した。これはもちろん「朝令暮改」の誤りで、朝三暮四とは、猿にトチの実を「朝に3個、暮れに4個やる」と言ったら猿が怒ったため、「朝4個、暮れに3個やる」と言ったら喜んだという中国の故事で、目先の利益にとらわれることである。

 首相は知らないのだろうが、鳩山内閣には朝三暮四の政策が多い。例えば子ども手当は、子供1人あたり約500万円の補助金を出す政策だから、親は嬉しいだろうが、その財源は国債で調達され、それは結局、増税として子供の負担になる。

 自民党政権でこうしたバラマキが続けられた結果、税や年金による受益と負担の差は、60代では1人あたり5700万円の受益超過だが、20代は1300万円の負担超過と、7000万円もの差がついている(経済財政白書)。このように大きな不公平が放置されているのは、日本だけだ。

 民主党は「格差是正」を言うが、市場で生じる所得格差は本人の努力で回復可能である。これに対して世代間格差は、階層にかかわらずすべての若年層に生じ、個人の努力ではどうにもならない。

 しかし政治家は、このような問題にはあまり関心がない。国会で問題にならず、大部分の有権者には意識されないからだ。

政治家にとって増税は鬼門だが

 増税についても同じことが言える。2005年の郵政選挙で、民主党は消費税を増税して年金財源に充てることを主張したが、昨年の総選挙では封印した。

 仙谷由人国家戦略担当相は、国会で「郵政選挙のあと、政策的にまともなことを提起するのでは、なかなか日本の選挙は勝てないと総括した。大人にならないと政権に近づけないと反省した」と明かした。

 民主党が「増税は無駄を省いてから」というのは建て前で、増税を先送りしているのは、選挙に負けるからなのだ。