最近、私のブログに奇妙な広告がしきりに出るようになった。「考えてみよう! TPPのこと」と題したそのウェブサイトを運営しているのは「TPPから日本の食と暮らし・いのちを守るネットワーク」という団体だ。
調べてみると、幹事団体は全国農業協同組合中央会(JA全中)で、多くの農業団体が並ぶ。このウェブサイトを見ると、彼らの戦術がよく分かる。
民主党内を二分するが世論は盛り上がらない
「脅かされる食の安全と安心」や「食料自給率が13%に下がる」などはおなじみのプロパガンダだが、これだけでは一般消費者の支持を得られないとみたのか、「医療の質の低下、患者の負担増」とか「雇用は減少、賃金引き下げ」などの項目が並んでいる。
農業だけではなく、広く支持を集めようという狙いだろう。日本医師会は「営利を求める外資が参入して国民皆保険制度が崩壊する」と反対を表明したが、TPPには公的医療保険は含まれていない。
野田佳彦首相は11月のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)までに民主党内の意見を集約しようとしているが、党内では、山田正彦前農相を中心とする「TPPを慎重に考える会」は199名の署名を集め、過半数に迫っている。しかし、世の中はいま一つ盛り上がらない。
それは反対派の言う「アメリカの強硬な対日要求」が一向に出てこないからだ。
ネットで「TPP」を検索してみても、出てくるのは日本のサイトばかりで、アメリカのメディアはまったく関心がない。医療はおろか、農業についても具体的な交渉はほとんど始まっていないのだ。
空回りする反対派と片思いの経産省
このように実態の不明なTPPについて、反対派の議論だけが妙な盛り上がりを見せているのは、これが「アメリカの陰謀」というおなじみのストーリーで語られるからだろう。