環境問題への世界的な関心の高まり、限界が明らかになりつつある石油依存社会──。
こうした状況の中で、太陽エネルギーの活用が見直されている。
経済評論家であり、日本ビジネスプレスのファウンダーの1人でもある山崎養世氏は、
太陽エネルギーを核とした「太陽経済」が立ち上がり、世界を大きく変えていくと唱える。
太陽経済がもたらすインパクトについて山崎氏に聞いた。  (聞き手は鶴岡 弘之)

──経済モデルの転換が急がれる理由は。

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 今後の世界経済を考えると、金融危機よりももっと深刻な問題があります。中国やインドがこれ以上成長したら、エネルギーが全く足りなくなってしまうということです。

 インドと中国の人口を合わせると約25億人。日本の20倍なんですよ。さらに、中国では1ドルのGDPを生むのに必要なエネルギーの量は、日本の9倍もある。だから中国やインドがこれから成長して、日本人と同じ所得水準になってしまったら、180倍のエネルギーを使うことになる。

 仮に中国人が米国人と同じように車を持ってガソリンを使えば、それだけで世界の石油は足りなくなってしまいます。こっちの方がサブプライム問題より、よほど深刻な事態なんです。

 20世紀の経済を支えていたのは石油です。石油を使って自動車や飛行機を作ったり、製鉄や化学産業を興したり、火力発電で電気エネルギーを取り出したりしてきた。コンピューター産業だって、石油の上に成り立っていたと言えます。

 ところが、これからは石油経済が続かないことがはっきりしてきた。石油経済から次の経済に移っていかないといけない。それが太陽経済なんですよ。極端な言い方をすれば、太陽経済に移れるかどうかに、人類の未来がかかっている。だから来年は間違いなく太陽経済元年でしょうね。

──経済、社会はどのように変わりますか。

 太陽経済ではまず太陽光パネル、風力発電、水力発電などで、太陽からエネルギーを取り出します。

 地球上に降り注いでいる太陽のエネルギーは、人間が1年に消費しているエネルギーの何倍くらいあると思います? 推定でだいたい5000倍はあると言われているんですよ。その莫大な太陽の光と熱のエネルギーを使わない手はありません。

 太陽光発電だけでなく、風を吹かせるのも太陽の力です。また、雨を降らせるのも太陽の力ですよね。だから風力発電や水力発電も太陽エネルギーを活用していると言える。波から発電する潮汐発電という仕組みがありますが、波だって本を正せば太陽が生み出すものです。それから最近は、植物が作り出すアルコールが注目されています。これも太陽と二酸化炭素の力で植物がアルコールを作るんです。

 そうやってエネルギーを取り出したら電池に貯めて、超伝導技術などを使って遠隔地に送電します。電気エネルギーの用途は大きく広がっています。来年以降、日本では電気自動車が爆発的に増えるはずです。なにしろ電気自動車は100キロ走るのに300円ぐらいしかかからない。ガソリンよりも圧倒的に安いんです。燃費効率がどんどん上がっていくと、300円よりももっと下がっていく可能性もあります。

 このように風力発電とか太陽光発電で電気を作って、電池に蓄えて、超伝導で送電して、それを電気自動車などで使う社会になる。まさに「ガソリン・ゼロ社会」が見えてくるじゃないですか。