2011月9月下旬、内外メディアが野田佳彦新首相の国連外交デビュー、米国製「F-16」戦闘機の対台湾売却、パレスチナ国家の国連正式加盟申請ばかり報じていた頃、南シナ海をめぐっては中国にとりまことに由々しき事態が静かに進行していたようだ。今回は久しぶりで南シナ海の現状をご紹介したい。
南シナ海をめぐる戦略環境の変化
まずは過去1カ月の南シナ海関連報道を振り返ってみたい。大きな流れは、フィリピンとベトナムが南シナ海に関し中国と対話を続けながらも、同時に中国との将来の対立を念頭に、インド、日本という「新たなパートナー」を獲得する地道な努力を行ったことだ。
これらの動きをより詳しく見ていこう。
8月31日 フィリピン・中国首脳会談(北京)
9月5日 フィリピン海軍、米国製大型巡視船の購入を発表
9月初旬には、比中両国首脳が南シナ海の領有問題を「棚上げ」し、経済関係強化を図ったなどと報じられたが、結果的にかかる観測は的外れだった。
アキノ大統領の訪中直後、フィリピン側は米国から巡視船を導入すると発表するなど、南シナ海問題に関し厳しく臨む姿勢を改めて示している。
9月8日 ベトナムと中国、南シナ海領海問題をめぐる「交渉の迅速化」で合意と新華社報道
9月15日 中国外交部、南シナ海での「如何なるプロジェクト」にも反対すると表明し、暗にインドを非難
9月16日 インド政府、ベトナムとの石油探査合弁事業は「国際法に適ったもの」と反論
同様の動きはベトナムでも見られた。新華社の「中越和解」を示唆するかのごとき報道にもかからず、ベトナム政府はインド石油天然ガス公社(ONGC)に対し南シナ海の2カ所でガス油田開発の許可を与えた。
ベトナムは事実上、南シナ海問題にインドを関与させ、中国を牽制しようとしたとしか考えられない。
これに対し、当然中国政府系紙・環球時報は9月16日、「かかる行為はインド洋における中国の活動を牽制するインド側の野心の表れであり、『中国を限界点まで追い込む』重大な政治的挑発だ。中国は如何なる手段を用いてでも、断固これを阻止すべし」などと厳しく反論している。