新聞・テレビが経営的にも、言論的にも弱体化する中、米国では寄付をベースとする「非営利ジャーナリズム」が新たな潮流となりつつある。個人からの寄付で福島第一原子力発電所事故の検証リポートの出版を目指すFUKUSHIMAプロジェクト編集部会長の西村吉雄氏と、読者からの投げ銭で取材活動を行っているフリージャーナリストの烏賀陽弘道氏に、日本のジャーナリズムの未来について語ってもらった。

西村吉雄氏/前田せいめい撮影西村 吉雄(にしむら・よしお)氏
1942年生まれ。71年東京工業大学博士課程修了、日経マグロウヒル(現日経BP)入社。「日経エレクトロニクス」編集長、日経BP社発行人、編集委員など歴任。東京大学大学院教授などを経て、現在は早稲田大学大学院ジャーナリズムコース客員教授、東工大学長特別補佐。FUKUSHIMAプロジェクトでは編集部会長を務める(撮影:前田せいめい、以下同)

 昨日の前篇「報道人は食っていけるか、生き残れるか?」に引き続き、2人が福島第一原発事故を取材・分析する中で行き着いた、「軍事としての原発」に関する議論を紹介する。

西村 FUKUSHIMAプロジェクトの執筆作業の過程でいろいろ資料を集めているのですが、調べれば調べるほど「原発」と「核兵器」との関係が浮き彫りになってくる。

 1969年に外務省が「我が国の外交政策大綱」という内部文書を作成しています。2010年にその文書が公開(PDF)されたのですが、そこには「核兵器は当面保有しないが、核兵器を作るだけの技術力と経済力は保持する」との方針が明記されていた。それは、不動の方針としてずっと続いてきたのでしょう。

 だから、「市場経済の観点で、原発は儲からないから撤退する」という選択は電力会社には許されなかった。

  原子力発電所の立地する自治体にはさまざまな名目で補助金や交付金が出ていて、あれを勘定に入れれば、原子力発電のコストはちっとも安くない。でも「あれは国防費です」「経済的なためのお金ではありません」ということになれば、それはしょうがないよねということがウラであったかもしれない。

日本は潜在的核保有国の筆頭格?

烏賀陽 米国の大学院の最初の授業で「君たちは、世界に何カ国核保有国があるか知っているか?」と聞かれました。

 「アメリカ、ソ連、イギリス、南アフリカ、イスラエル・・・」と名前を挙げていくと、教授は「実際に核兵器を持っている国とは別に、核兵器を開発可能で、それを飛ばして相手国に打ち込むロケット技術もあるけれど、政治的な判断で核兵器を持たない国がある。それはどこか?」と言うのです。「もしかして日本ですか?」と聞いたら「そうだ」と。