1.はじめに

「国益損ねないと約束された」、NPT最終文書にイスラエル反発

イスラエル南部のケネブ砂漠にある原子力発電所〔AFPBB News

 エジプトは今年9月に入り、IAEA(国際原子力委員会)のメンバー国に対し、イスラエルによるその原子力施設に対する広範な査察拒否を許せば、拡散阻止の信頼のおける強制機関としてのIAEAの評判を損なうことになると警告している。

 またエジプトのエネルギー相はIAEAの総会で、1995年にNPT(核兵器不拡散条約)加盟諸国が、中東諸国に条約に加盟して核兵器を域内からなくすように迫った時以来、イスラエルは少しもNPT加盟に向けて歩み寄っていないとも、述べている。

 これまでイスラエルは、核兵器の存在を否定も肯定もしないという政策をとってきた。アラブ諸国は域内での軍備管理交渉を進めるため、イスラエルにNPTに署名するようにIAEAの総会で迫る決議を追求しないことに合意してきたと報じられている。

 2009年も2010年もそのような手法がとられてきた。しかし昨年は、危うく覆されそうになった。

 欧米は、イスラエルの核兵器を標的にすると、中東域内での大量破壊兵器の拡散を阻止する努力が損なわれるとしてきた。しかしエジプトは、今年9月末のIAEA会合のために、包括的な中東域内でのIAEAの査察の実施を提案したとしている。

 さらにエジプトは、今年11月のIAEA会合では中東の非核兵器地帯条約に向けて前進し、2012年までに中東を大量破壊兵器のない地域にする意向を表明している。

 このように、イランの核開発が進展する一方で、イスラエルの核保有についても明確にするように求める声が、中東諸国内でも高まっている。その背景には、イスラエルの核保有に至る長い歴史がある。