この記事は2009年8月20日に公開されたものです
中国人民解放軍海軍(People’s Liberation Army Navy: PLAN)は昨年12月26日、駆逐艦2隻と補給艦1隻からなる艦隊をアデン湾へ進出させ、国連が促す海賊予防の国際共同行動に加わった。
以来、PLANは艦船ならびに要員の交替を挟みながら、引き続き当該海域でのプレゼンスを維持している。
海賊対策に名を借りた「プレゼンス」の押し出し
この「プレゼンスを維持する」とは、どの国であれ海軍を遠方へ押し出す際、必ず随伴させる政治的意味合いである。中国はPLANを遠くソマリア沖に出すことで、世界に何を示そうとしているか?
石油の海上輸送路・シーレーンに及ぶ支配を、米海軍(と日本の海上自衛隊、ならびにインド海軍)に独占させておくまいとする、その明白な政治的意思である。
遅れて日本の海上自衛隊も今年の3月14日、2隻の護衛艦を送って作戦に加わった。
初めて尽くしのことで、PLANについていろいろな知見を海自にもたらしている。
PLANが長期間、中国沿岸から遠く離れた展開任務に就くのが初めてなら、これと括りとしては同じ作戦に海自が従事し、比較的近くでPLANの仕事ぶりに接するのも、もちろん初めてのことである。
「もしかして、負けてる?」
ここで海自がPLANの能力に初め驚き、やがて「もしかすると実力において負けつつあるか、もう負けたかもしれない」というまだ小さくひそやかだが、ある実感を伴った疑問を持ち始めていることに関心を促したい。
こう記すに当たってはいつ誰から聞いた話なのか、その根拠を引照することができない。しかし日本の安全保障にとって小さくない意味を持つことだから、選挙期間中の今、あえて本コラムで触れておく。
と、いうのも、安全保障論議は予想通りと言おうか文脈抜きのアイテム是非論に矮小化されてしまっているからである。「海賊対策」はやめるか続けるか。「給油」は。「船舶検査」は、といった具合。