政府のエコカー減税措置によって、国内自動車メーカーの単月販売が秋口からプラスに転じた。牽引役となったのはハイブリッド車を中心とする「低燃費車」だ。

 クルマはニッポンの基幹産業。全就労人口6400万人のうち、クルマ業界に従事する人口は500万人にも達するだけに、販売実績が上向いたのは明るいニュースに違いない。

 だが、果たしてその中身は、手放しで喜べるものなのだろうか。

燃費試験にパスするために存在する専用シフトプログラム

 「どうやってもカタログ上の燃費を達成できない」・・・。

 最近、ハイブリッド車(HV)や低燃費車を購入した知人たちからこんな言葉を聞いた。実際、売れ筋HVの多くは、1リッター当たりの燃費が「30キロ超」とカタログに記されている。しかし、「30キロ超」のコピーに惹かれて売れ筋HVを買った友人によれば、実燃費はせいぜい20キロ前後だという。

 実は、落差の裏側には、ある重要なカラクリが潜んでいるのだ。

 まずは国土交通省の「10・15燃費基準」の説明から。これは、市街地走行を想定した10の項目(10モード)と、郊外地を見据えた15の細目(15モード)から構成されている。

 具体的には、「時速20キロまで加速する(7秒)」「20km/hをキープして走行(15秒)」「20km/hから減速して停止(7秒)」(いずれも10モードの場合)・・・、といった細分化された項目について燃費を測定するのだ。これがカタログに記載する際の基準となる。

 では、なぜカタログとの隔たりが生じるケースが多いのか。

 最大の原因は、国内メーカーの大半が用いる専用シフトプログラムにある。