9月1日、世界的医学雑誌『ランセット』が「国民皆保険達成から50年」と題した日本特集号を発刊しました。200年近くに及ぶ長い歴史を誇るこの医学雑誌において、先進国単独で特集が組まれたのは日本が初めてです。

 アメリカのオバマ大統領が現在導入しようとしている国民皆保険制度を、日本は50年も前に達成し、平均寿命などの健康指標は世界トップレベルです。その上、日本の医療費は国内総生産(GDP)のわずか8.5%程度と米国の半分に過ぎず、低コストの医療を実現しているのです。

 日本の医療が、グローバルヘルスにおける世界のリーダー的存在と認められ、特集号が発行されたのは、日本人として誇りに思うべきことです。

 しかし、私はこの快挙を手放しで喜ぶ気持ちになりません。

 なぜならば、日本の医療は国民の健康水準を大幅に改善して、世界一の長寿国を達成し、なおかつ医療費も安く済んでいるにもかかわらず、日本人の日本の医療に対する「満足度」は決して高いとは言えないからです。

医療費への不満の高まりは「財源不足」が本当の原因

 今回のランセットの特集では、医療に対する満足度は、各国の満足度を単純に比較するのではなく、満足度の変化を見ることに意義があると指摘しています。

 日本の医療の満足度は、実際にどのように変化したのでしょうか?

 厚生労働省が実施した「受療行動調査」によると、外来治療の満足度は1994年の48%から2008年には58%へと上昇しました。また、入院治療の満足度も54%から66%に上昇しています。つまり、医療そのものに対する満足度は大幅に向上しているのです。

 一方、満足度が悪化した項目として、「医療費のレベル」が挙げられています。

 歴史的に見ると、84年には70歳以上の医療費は1割負担でした。それが、2003年には2割、2006年には3割へと引き上げられてきています。25年ほど前と比較して、同じ治療であったとしても窓口で支払う金額は3倍に増えたことになります。