復興増税をめぐって民主党税制調査会が紛糾している。9月26日の総会では、藤井裕久会長が所得税などを2013年1月から増税する方針を示して「会長一任」を求めたのに対して、多くの国会議員から異論が噴出して決定が延期された。本稿を書いている時点では、まだ決着がつかない。
こういう光景には「既視感」がある。20年ほど前、NHK特集で「自民党税制調査会」という番組をつくったことがある。当時の山中貞則会長の許可を得て、カメラマンがロッカーの中に隠れて税調の一部始終を隠し撮りし、編集した映像を山中氏にチェックしてもらって放送したのだ。
「ガス抜き」で荒れる民主党税調
放送された番組は当たり障りのない話ばかりだったのだが、私は(担当者ではなかったが)その素材ビデオを見せてもらって驚いた。
報道陣をシャットアウトした総会では、「バカヤロー」とか「話が違うじゃないか!」といった罵声が飛び、灰皿を投げつける議員もいた。山中会長は一言も発しないで、最後に「原案どおり決します」と結論を出す。これを「ガス抜き」という。
今回の民主党税調の光景も、それにそっくりだ。灰皿こそ飛ばないものの、「増税反対」の大合唱で、特に若手の議員が「デフレのとき増税するのはおかしい」とか「無駄の削減が先だ」といった紋切り型の批判を繰り返し、テレビのインタビューにも語気荒く答える。
しかしデフレのとき増税しないというなら、インフレにならなければ永遠に増税しないのか。「無駄の削減」を掲げた行政刷新会議の数千億円の実績を見れば、それが10兆円以上の増税の代わりにならないことは明らかだろう。
こういう議員は、マスコミ向け(というか選挙区向け)に「私は増税に反対した」という芝居をしているのだ。
税調は、役職のない議員が執行部への不満をぶつけるとともに、選挙区で「私は反対したが執行部が増税を強行した」という型をつくる場なのだ。