9月7日、ヤロスラブリで発生したヤク(YAK)42型機墜落のニュースは、ロシア近代化を自身のスローガンとして掲げ、大統領再選への希望を捨てていない様子のドミトリー・メドベージェフ大統領にとっては、いかにもタイミングの悪い事故と言うしかない。
ロシアの問題点をさらけ出した航空機事故
9月20日には、「経済近代化諮問会議」なるイベントも控え、日本からも多くの経済人が訪露する。大統領の沽券にも関わるこの事故について、考察を進めてみる。
9月7日、8日の両日、コマツの最新工場もあって日本にもなじみ深いロシアの古都ヤロスラブリでは「世界政策フォーラム」が開かれていた。
多くの国からゲストスピーカーが参加、大統領もこのフォーラムの提唱者として、先頭を切って現地に乗り込んだ矢先の事故であった。
今年のフォーラムの副題は「多様化する社会における国家の役割」というもので、まさにロシアが置かれた立場を論ずるために設定されたようなテーマだった。
しかし、そのロシアの現状を示すのに、フォーラムは不要だったかもしれない。それほど、この事故は現在のロシアの姿を如実に表している。
このフライトは、ロシア鉄道がオーナーであるプロホッケーチーム「ロコモティブ(機関車)」の選手、関係者37人を白ロシア共和国の首都ミンスクまで運ぶチャーター便だった。
ロシアで乱立する航空会社、その数130
このチャーター便を運航するのは、モスクワに本社があるチャーター便専門会社「YAKサービス」で、このようなチャーター便専用の航空会社がロシア中に存在しており、その結果、ロシアの航空会社の数は130にも上る。
乗客として、このフライトに搭乗したチーム37人の国籍を聞いて、私は耳を疑った。なんとと、10カ国にわたるというのである。
選手だけでも、白ロシア、ラトビア、チェコ、スロバキア、スウェーデン、米国、カナダ、と合計7カ国だ。まさにこれが現在のロシアプロスポーツの現状である。外国人プレーヤーなくして成立しない状況が年々強まっている。
特に、動員観客数の多いサッカー、ホッケーで顕著である。日本では、CSKAモスクワでプレーする本田圭佑選手が有名だが、ロシアでプレーする外国籍サッカー選手は今やリーグ登録選手の4分の1を占めるほどだという。