昨年米インターネットサービス大手のAOLに買収されたテクノロジー系ニュースブログ「テッククランチ(TechCrunch)」――。13日、AOLはその創設者で共同編集長のマイケル・アーリントン氏が同職を辞任し、AOLも去ることが決まったと発表した。

 テッククランチは2005年にアーリントン氏が設立。シリコンバレーを中心にテクノロジー関連のニュースをいち早く伝えることで定評があり、アーリントン氏はテッククランチの“顔”として業界に広く知られている。

報道倫理の問題指摘される

ハフィントン・ポスト、月間訪問者数でNYタイムズ抜く

報道倫理を問題視したニューヨーク・タイムズ〔AFPBB News

 実は同氏の去就を巡ってこの1~2週間、メディアが様々に報じており、情報も錯綜していた。事の発端は、同氏がこの9月に「クランチファンド(CrunchFund)」というベンチャーキャピタルを設立したことにあるようだ。

 これにより、シリコンバレーの企業を取材するメディアのトップがシリコンバレーの企業を対象にした投資事業を行うという状況が生まれた。

 これを受け、「ジャーナリストは自分の取材対象となる人物や団体とは距離を置き、利害の衝突を避けるべきだ」などと米ニューヨーク・タイムズなどのメディアが、報道倫理の問題を指摘するようになっていた。

 当初、AOLのティム・アームストロング最高経営責任者(CEO)はこうした批判に対し、「我々はジャーナリズムというものを十分理解している。テッククランチは異なる基準を持っており例外になるが、透明性は確保している」などと述べていたが、こうした一連の発言が問題を拡大したと見られている。

原因は新体制トップとの対立か?

 AOLは2010年9月にテッククランチを買収後、2011年2月に米ネットニュースサイトのハフィントンポスト(The Huffington Post)も買収し、組織再編を行った。

 その際新たに「ハフィントンポスト・メディア・グループ」という事業部門を設置し、ハフィントンポストの共同創設者アリアナ・ハフィントン氏を同事業の社長兼編集長に就かせ、テッククランチをその傘下に置いた。

 AOLはアーリントン氏が辞めることになった理由について詳細を明らかにしていないが、一連の声明やメディアの報道を見ると、今回のベンチャーキャピタル設立に端を発した批判と、それに伴う新組織体制の方針で対立が生じたようだ。