反米の象徴でもあったカダフィ大佐による長期政権が崩壊へと向かっているリビアで、政権が米中央情報局(CIA)と協力関係にあったことを示す文書が見つかった。
テロ容疑者をリビアに移送し尋問を行っていたというもので、9.11同時多発テロ事件後、リビアが大量破壊兵器開発計画放棄宣言をして国際社会へ復帰していた頃のものとはいえ、最大の敵の1人に数えられていた存在をも利用するCIAのしたたかさを改めて認識することとなった。
CIAの陰謀によってテロとの戦いに引きずりこまれた英国
そんなテロ容疑者に対する尋問での違法行為に加担したとして英国の元首相がICC(国際刑事裁判所)に調査依頼されてしまう筋立てとなっているのが、現在劇場公開中の『ゴーストライター』(2010)。
トニー・ブレアにもイメージが重なるその元首相はICC未加盟の米国に逃げこんでおり、CIAの陰謀で英国は「テロとの戦い」に引きずり込まれたとのプロットが興味をひく。
そうした米英のテロ容疑者に対する扱いについては、もう1人の長年の宿敵フィデル・カストロが治めていたキューバにある米国の租借地グアンタナモに造られた収容施設での行為が物議を醸してきたことは、今さら言うまでもないだろう。
その実態を正確に把握することはもちろん不可能だが、映画『グアンタナモ、僕達が見た真実』(2006)は参考になるはずだ。
と言うのも、実際にアフガニスタンで米軍に拘束されて以来2年半あまり、グアンタナモに収容され続けた「ティプトン3」と呼ばれる英国人青年たちがカメラの前で自らの体験を語っているからである。
ことの詳細についてはパキスタンなどでロケされた俳優の演技で映像化されているから、パキスタン系、バングラデシュ系であるとはいえ、れっきとした英語が母語の英国人だった彼らが、米国に追随した「祖国」英国政府になかば見捨てられてしまった様子がよく見える。
しかし、「そんな時、どうして普通の英国人がアフガニスタンなどにいたのか」との素朴な疑問が湧いてくる。
その答えはと言うと、何のことはない、ティプトン3の1人アシフが結婚式を挙げるためパキスタンを訪れたついでに、ちょっとした冒険心からアフガニスタンに行っただけのことなのである。