今からちょうど20年前の1989年11月9日、移動の自由を求めて東ベルリン市民がブランデンブルク門周辺に殺到し、暴動を恐れた東独政府の判断でベルリンの壁が開放され、東西を分断していた「鉄のカーテン」は事実上崩壊した。
社会主義体制から移行した国々の挑戦は失敗したのか?
それから相次いで東欧の国々は社会主義を放棄し、西側と鋭く対立していたワルシャワ条約機構も解体、そしてついには東側の盟主ソビエト連邦も混乱の末に1991年末に消滅し、東西冷戦は終結した。
同時にこれらの東側諸国は社会主義から資本主義へという体制移行に着手し今日に至っている。
東西ドイツは統一され、中央ヨーロッパの旧社会主義国の多くがEU(欧州連合)に加盟した。あれから20年が経った今日、歴史的回顧のため様々な記念事業が実施されている。
例えば10月31日にはベルリン市内でコール元ドイツ首相やブッシュ(父)元米大統領、ゴルバチョフ元ソ連大統領らが出席した記念行事が開かれ、「ベルリンの壁」崩壊の意義について話し合われたという(ロイター他)。
そんな中、体制移行支援に大きな役割を果たしてきた世界銀行も、こうした時流に合わせて「20年目の混乱(Turmoil at Twenty)」という興味深いリポートを公表した(リポート全文はこちら=PDF)。
今回は、「ベルリンの壁」崩壊20年という節目を意識して、このリポートを素材にしながら、ロシアだけでなく広く旧社会主義の体制移行諸国の現在を考えてみることとしよう。
「社会主義体制から移行した国々の挑戦は成功したのか?」
世界銀行のリポートによれば、2007年夏から顕在化した米国のサブプライムローン問題に端を発する今回の世界的な金融・経済危機は、発展途上国よりも欧州の体制移行国の方により深刻に影響したという。
実際、IMF(国際通貨基金)の最新の世界経済予測によれば、2009年の経済成長率は途上国、例えばアフリカ全体では1.7%の見通しである。
一方、欧州の体制移行国(欧州新興国のうちトルコを除く)においてはマイナス4.3%、CIS諸国(グルジア、モンゴルを含む13カ国)ではマイナス6.7%とより深刻である(IMFのWorld Economic Outlook October 2009)。このことから、20年間にわたる移行プロセスは失敗だったと言えるだろうか。