台湾の大手パソコン(PC)メーカー・エイサー(宏碁=acer)が、2009年7~9月期の世界PC出荷台数で、ついに、米デルを抜き、米ヒューレット・パッカード(HP)に次ぐ世界第2位に躍り出た。ノートPCより一回り小型のネットブック「アスパイア・ワン」シリーズを2008年8月に発売して以来、売り上げの伸びに拍車が掛かった。(文中・敬称略)

エイサーの最新マルチタッチ対応PC「アスパイアZ5610」 ウインドウズ7と23型の液晶パネルを搭載している

 もともと、台湾は世界のノートPC市場の約70%を縁の下で支える一大OEM(original equipment manufacturing=相手先ブランドでの生産)供給拠点であり、ハイテク産業の実力は折り紙つきだった。しかし、自社ブランドで世界市場のトップクラスに躍り出たエイサーの快進撃は台湾の大きな誇りとなっており、地元経済紙でも連日のように取り上げられている。

 エイサーは2010年PC販売台数目標を今年の見通し比3割増の4000万台と設定し、いよいよ世界の頂点を射程に入れた。

低価格PCのOEM供給で急成長

米ゲートウェイの買収を発表したエイサー株がストップ安

エイサーは地元台湾でも手頃な価格で人気。市場シェア3割を誇る〔AFPBB News

 エイサーは電子計算機のエンジニアだった施振栄(スタン・シー)と妻の葉紫華(キャロン・イー)らを中心に1976年に創業した。台湾の主要なIT企業は、戦後に中国大陸から台湾に渡ってきた外省人系が創業した例が多いが、エイサーは液晶パネル大手の奇美電子と並び、戦前から台湾に住む本省人系企業の代表格だ。

 創業当初は従業員わずか11人の小所帯で、中央演算処理装置(CPU)を中心とする半導体の輸入販売などを手掛けていた。しかし、その後、技術開発に力を入れ、1979年には台湾で最初の輸出向けコンピューターの開発と大量生産に成功。これがPCメーカーとしての原点となる。