ウラジオストクは遠い、だが我らの街だ
(V.I.レーニン)
つい先日、久しぶりにウラジオストクに帰った。その飛行機の中で、配られたロシア語の新聞にウラジオストクの戦略的発展プログラムについての記事を見つけ、目を疑ってしまった。2007年からこの研究に関わっているサンクトペテルブルクのレオンチエフスキ経済・社会研究所が出しているいくつかの提案の中に、「街の半分を中国に割譲し、この地域を租借地にする」という内容が含まれていたからだ。
市の半分を中国に譲り年間1500億ルーブルの租借料を
それによると、中国に属する町の部分は中国ハルビン市の行政当局が管轄する行政機関を設けて町の運営に当たる。ロシアと中国の間の出入りは通関機関によって管理することを想定し、割譲期間は75年とする。もちろん、無料ではない。中国にはロシア領土の利用料として1300億~1500億ルーブルを支払ってもらうというもの。
この租借料はロシア沿海州における行政予算を数倍上回り、極東地域のインフラ整備から太平洋艦隊強化まで、様々な使い道が考えられている。
「何とか手を汚さずに金儲けできる方法を考える」というロシア人の思考方法に改めて呆れてしまった。2012年のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議開催をはじめ、現在、極東地域開発のために数多くのプログラムが実施されつつある。ロシア連邦政府からも膨大な資金が投入されている中で、なぜこのような情けない将来シナリオが考え出されたのだろうか。また、市民はそれをどのように感じているのだろうか。私なりに探ってみた。
ロシア連邦政府によるロシアのアジア太平洋地域を発展・開発する方針の中、2012年に予定されているウラジオストクにおけるAPEC首脳会議開催は、沿海州中央地域の活性化に大きな期待が寄せられている。ロシア地域発展省の計算によると、サミット開催準備費用は2657億ルーブル(約8237億円)となる。内訳は、沿海州の予算から156億ルーブル、民間投資家が607億ルーブルで、全体の71%に当たる1894億ルーブルは連邦政府が負担する。
5つ星ホテルにオペラ・バレーの劇場まで
サミット関連施設としては、ウラジオストク空港における追加滑走路建設、ルースキー島連絡橋、また、街を二分する金角湾対岸のチュルキン岬への立橋の建設、ルースキー島のAPEC首脳会議開催跡地利用としての極東連邦大学の建設、医療センター、5つ星ホテル、ビジネスセンター、一番開発が遅れているチュルキン岬では、何んとオペラ・バレー劇場の建設まで計画されている。
そのうえ、これまで長い間、問題とされた町の浄水システム工事もこれを契機にやっと始まった。
プーチン首相はウラジオストクの訪問を繰り返し、工事現場の視察を定期的に行っている。今回のサミットは極東地域の経済的な復興だけではなく、2012年に新しく選ばれるロシア新大統領による世界に対するメッセージを送る舞台とするという思惑もある。
サミット開催準備を担当しているイーゴリ・シュワロフ第1副首相は同プロジェクトに必要な資金供給の遅れはなく、準備作業は計画通りに進められると主張している。