今週はトルコのイスタンブールでこの原稿を書いている。ホテルの窓を開け、東洋と西洋を隔てるボスポラス海峡を見下ろす眺めは文字通り絶景だ。
ちなみに「ボスポラス」とはギリシャ神話に出てくる「牝牛の渡渉」のこと。ゼウスの妻の不倫相手が牛にされ、この海峡を泳いで逃げていったのだそうだ。
中東は筆者の「本籍地」であり、今年の1月あたりから何かと騒がしくなってきた。昨日までイスラエルのテルアビブに3日間滞在していたが、欧米メディアはリビア・カダフィ政権の崩壊ばかり詳しく報じ、ジョセフ・バイデン米副大統領の訪中など関心がないようだ。マスコミとは実に現金なものである。
さて、中国と中東については書くべきことが山のようにある。特に、エネルギー確保を目指す中国の資源外交の凄まじさについては、いつか纏めたいと思っている。
しかし、昨日はイスラエル訪問中にひょんなことから中国の最先端技術確保の努力を垣間見ることができた。今回はこの話を取り上げたい。
拡大する中国・イスラエル貿易
中国の対イスラエル輸出は2010年に中国本土と香港を合わせ総額61億ドルとなり、2009年の46億ドルから大幅増となった。その間日本の対イスラエル輸出は15億ドルから18億ドルへ、韓国も9億ドルから11億ドルへそれぞれ伸びているが、中国に比べれば総額、増加率ともかなり見劣りする。
また、イスラエルの輸出を見ても、アジア地域での中国の重要性は抜きんでている。2010年の対中国輸出は本土と香港を合わせ59億ドルとなり、2009年の49億ドルから10億ドルも増えている。ちなみに、この間の対日輸出は5億ドルから7億ドルへ増加、対韓国輸出も8億ドルと横ばいだ。
これだけ見ても、中国がイスラエルにとっていかに大切な貿易パートナーであるかがよく分かる。さらに、イスラエルの対中国、韓国輸出の主要部分は武器ないし武器技術関連である可能性が高い。
中韓の対イスラエル貿易は、経済面だけでなく、安全保障面でも極めて重要になりつつあると見るべきだろう。