ソ連時代には平均して5年に1回、共産党大会が開催され、書記長が国の現況と将来の課題について報告をしていた。新生ロシアでは米国にならって、毎年1回、大統領がロシア連邦議会で「年次教書」を読み上げている。
ソ連時代との違いは報告の頻度だけではない。ソ連時代、共産党の報告はことごとく現実を装飾し、事実を隠していた。
だが、ロシア大統領の教書はそうではない。特に今度の11月の議会でメドベージェフ大統領が読み上げる教書は、かなり厳しくロシアの現状を見つめ、報告するものになりそうだ。
9月12日、メドベージェフ大統領はインターネット上に教書の案を発表した。その狙いは「国民の反応と意見を受けて、最終的な教書をまとめるため」である。
教書への反応は様々だが、全般的には激しいものだった。外国からは肯定的に受け止められたようだが、国内では批判的な意見が圧倒的に多かった。
「つまらない」「饒舌だが中身がない」・・・。左翼の方面からは「新リベラル主義と買弁資本による挑発だ」といった批判もある。
そうした批判はともかく、私自身は、ロシアの将来のためにも、ロシアの現実を率直に評価した注目すべき文書だと考えている。
「ロシア製商品の国際競争力は非常に低い」
教書案の中身は「肯定」と「否定」からなっている。プーチン時代の8年間については比較的「肯定」しながらも、全般的にはソ連崩壊後のロシアの歩みと現状について厳しく「否定」している。
ロシアの現状については、「あまりにも資源輸出に依存した経済」「慢性的な汚職の蔓延」「自分ではなく、国家や外国、または『全能の思想』等に頼ろうとする国民の悪癖」など、3つの欠陥を並べている。「これらの欠陥をなくさずに、果たしてロシアに将来があるのか」と問いかけている。
ロシア経済に対する厳しい表現として、例えば以下のようなものがある。