エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)は、エコノミスト・グループの調査部門として、世界各国の政治経済の分析・予測、カントリーリスク、産業別分析、その時々のビジネス諸問題に関する調査リポートを提供している。

 先般来日した同ユニットのエディトリアル・ディレクター兼チーフ・エコノミスト ロビン・ビュウ氏に、停滞感が強まる世界経済の見通しを聞いた。

不安定さが増す世界経済。牽引役の中国への影響は

川嶋 世界経済への不安が増し、世界中のマーケットが過敏に反応しています。その中で、アジアが唯一の成長地域だと思いますが、アジアが世界経済を牽引できるとお考えですか。

ビュウ 現在、アジアが経済的に最も活発な地域であることは間違いありません。中でも中国が世界経済の成長を支えています。

エコノミスト・インテリジェンス・ユニット ロビン・ビュウ氏/前田せいめい撮影ロビン・ビュウ(Robin Bew
エコノミスト・インテリジェンス・ユニット エディトリアルディレクター、チーフエコノミスト
(撮影:前田せいめい、以下同)

 ここにきて中国経済にも鈍化傾向が見られますが、これはインフレを抑えるために政府が意図的に取った政策の結果であって、今後数カ月のうちに著しく落ち込むということはないと思います。

 しかし、米国、欧州、日本などの主要経済国がいずれも苦戦中であることを考えると、中国一国でその落ち込みを補うことは難しいでしょう。中国経済もまた、世界的な景気悪化の影響をある程度受けるだろうと思います。

川嶋 中国のインフレは意図的に抑えられているということですが、インフレは中国にとって政治的な懸念でもあると思います。近い将来、引き締め政策を金融緩和に転じることはありますか。

ビュウ 中国の経済政策はある程度出つくし、インフレも頭打ちになっているようなので、これ以上の金利高はないと思います。一方、規制緩和の面では、中国政府は段階的に経済改革を進めていく方向にあると思います。例えば金融セクターをオープンにし、資金が流入しやすくするといったものです。

 中国政府としては今後も成長を続けることが重要な政策課題ですから、規制を緩和し、競争原理を導入することで成長を促すと思います。いまは競争力がない分野を開放し、国際競争力をつけることで継続的な成長を図るでしょう。