民主党の次の代表の有力候補とされる野田佳彦氏が「与野党が胸襟を開いて話し合い、救国内閣を作るべきだ」と大連立の構想を明言し、岡田克也幹事長や前原誠司前外相もそれを容認する発言をしたことから、急に大連立のムードが盛り上がってきた。

 「禁じ手」と言われてきた大連立に民主党の執行部が前向きなのは、衆参の「ねじれ」で国会が行き詰まった苦い経験があるからだ。岡田氏や仙谷由人代表代行には自民党とのパイプもあり、震災対策では一致点も多い。

 自民党と話の合わなかった菅直人氏と違って、増税路線の野田氏は自公両党にも受け入れられやすいだろう。特に税制では、消費税率を10%に引き上げるという方針で自民党と一致する。野田氏は、マニフェストの見直しにも前向きだ。

また盛り上がってきた大連立だが・・・

 大連立の構想そのものは菅内閣の時からあったが、野党に拒否されて不調に終わった。弱体化している菅直人首相に手を差し伸べる必要はないという意見が自民・公明に強かったからだ。これが本格政権になれば、野党が乗る可能性も出てくるだろう。

 ただ難関は多い。最大の問題は、連立の条件として「政策の一致」が求められることだ。

 自民党は、かねてから「バラマキ4K」(子ども手当、高校授業料無償化、高速道路無料化、農業者戸別所得補償)の撤回を求めており、特例公債法案の条件として子ども手当をつぶした。次は他の3Kも撤回することを連立の条件にするだろう。自民党の谷垣禎一総裁は「大連立を組むのはまさに例外中の例外であるべきだ」と大連立に否定的な見解を示した。

 他方で、民主党内にはマニフェストの堅持を求める小沢一郎元代表を中心とする勢力が強く、新首相がその板挟みになって連立協議は不調に終わるとの見方も強い。