今年5月の本コラムで、郊外地に巨大なモールを展開する流通大手のSC(ショッピングセンター)のビジネスモデルが客足の落ち込みとともに、岐路に差しかかっていると指摘した。
その後、流通大手各社は矢継ぎ早に施策を打ち出したが、目立った効果は表れていない。
今回は、筆者自身が目にした事象に触れながら、流通大手の現状と先行きをナナメの視線で分析してみた。
シンパのアナリストも投資判断引き下げ
今年5月の原稿では、「ブルーチップ」と呼ばれる優良株に投資する海外機関投資家の間で、SC事業の不振を理由に、イオンやセブン&アイ・ホールディングスの株を手放す動きがあると触れた。
その後、大手各社は食品メーカーなどと共同で日用品の全国展開商品(ナショナルブランド)の一斉値下げで客足の確保に躍起となった。だが、「足元の四半期業績を見る限り、効果は限定的だった」(外資系運用会社)と捉える機関投資家が大半だった。
大手各社の足元四半期業績は減収減益が大半で、通期の見通しも下方修正含みが少なくない。このため、「今まで比較的楽観的に見ていたセルサイド(証券会社)の流通担当アナリストも相次いで投資判断の引き下げに動いた」(同)という。
筆者が把握しているだけで、9月に入ってから米欧の大手証券3社がセブンなど流通大手の投資判断を「買い」から「中立」に引き下げた。
「百貨店販売の低迷が長期化する中で、流通アナリストの多くが大手のSC事業が日本の小売りの柱として成長を続けると見てきたが、足元の落ち込みには抗し難かったのでは」(同)との声が上がる。流通大手に少なからず肩入れしてきたシンパからも失望感が広がった形となった。
店内の一等地で開催されていたイベントの裏事情
9月上旬、筆者は自らの最新刊プロモーションのために東北地方を駆け巡った。その際、巨大流通資本が運営する複数の大型SCを訪れた。入居する全国チェーンの書店に挨拶回りするのが主たる目的だったのだが、筆者の興味を引く事象があちこちで見受けられた。
SC内の目抜き通りの至る所に、地元小学生の絵画展、あるいは地元出身スポーツ選手の活躍を市民に報告する特設コーナーが設けられていた。