台風9号が沖縄県を直撃している。8月4日午後の羽田行き便はすべて欠航となり、1泊の予定だった筆者の那覇訪問は連泊になった。現在この大型台風は沖縄本島と宮古島の間を抜け中国大陸に向かっている。興味深いことに、このコースは中国海軍の艦隊が太平洋に出入りするルートとほぼ同じだ。
筆者が外務省で日米安保を担当していた頃、沖縄と言えば基地問題、特に地位協定の運用との関連で最も重要な自治体の1つだった。
しかし、当時は在沖米軍問題関係に忙殺され、中国と沖縄の関係をじっくり考える機会がなかった。というわけで、今回は「沖縄の中の中国」について考えてみたい。
沖縄の領有権を主張する中国人
2005年に中国で起きた反日デモの際には「沖縄を中国に返せ」と訴えるビラが撒かれたと報じられた。
同年、中国のメディアは日本による「琉球接収」は国際法上根拠がなく、沖縄の地位は「未確定」とする論評を発表したという。
こうした状況は2009年以降も続き、昨年の尖閣事件の際は、政府系メディアに「沖縄は19世紀末に明治政府が清朝から奪い取ったものだ」とする評論が掲載された。
さらに、同時期に起きた反日デモでは「琉球を返せ」「回収琉球、解放沖縄」といったプラカードや横断幕まで登場したそうだ。
「沖縄」を使って尖閣問題で日本を揺さぶろうとするのだから、中国の宣伝マシーンも大したものである。しかし、こうした根拠のない主張は一部の学者や個人のものに過ぎない。
さすがの中国政府も公式に沖縄に対し「領有権」を主張したことはないはずだ。この点については台湾政府も同様だと理解している。
問題は中国政府のプロパガンダの「巧妙さ」「えげつなさ」だけではない。より重要なことはウチナーンチュ(沖縄人)の対中国観である。