日本経済にもたらす一筋の光明、それが中国の富裕層、いわゆる「中国人セレブ」の存在である。
日本の不動産業界は、中国人セレブによる不動産の購入を「現金で一括払いだ!」と狂喜乱舞して歓迎する。不動産業界に限らず、中国人セレブは今や日本経済の活性化になくてはならない存在となっている。なんとかしてこの人脈に食い込み、売り上げ拡大につなげたいと目論む日本企業は少なくない。
だが、そこはご用心。なぜなら彼らは実に短命だからだ。
中国人セレブを相手に業績を伸ばしてきた欧州の某高級服飾ブランドの管理職はこう語る。
「顧客は、国家的なプロジェクトを受注した個人経営者や不動産業者が目立ちます。でも、顔ぶれは移り変わりが激しいようです。彼らは決まって2~3年で顧客リストから姿を消すんですよ・・・」
「石炭拾い」からセレブに上りつめた女性実業家
今回の高速鉄道事故によって、人命、安全を軽視する鉄道部の実態があぶり出されたが、もう1つ見え隠れするものがある。それは富裕層の暗躍だ。
国家プロジェクトの進行と官僚の汚職は表裏一体の関係にある。今回の高速鉄道事故からは、鉄道予算を温床にして肥えた官僚と、その「腰巾着」たちによる不正行為が浮かび上がってくる。
落ち穂拾いならぬ「石炭拾い」が瞬く間に富豪になる。そんなチャイナドリームが、ここ中国では現実に起こり得る。だが、あまりにも短期間に、あまりにも巨額の財を成し得てしまうところに危うさがある。
山西省出身の丁書苗(56歳)の人生は、改革開放の歴史とも重なる。列車やトラックが落としていく石炭を拾い集める仕事から始まり、石炭輸送会社の経営を経て、現在は女性実業家として頭角を現す。