「組合はとにかくダメだ!」。サムスン創業者の李秉喆(イ・ビョンチョル)氏は、1987年に亡くなる直前に後継者である3男の李健熙(イ・ゴンヒ)氏(現サムスン電子会長)にこう言い残したという。

 サムスングループは創業以来、「無労組」の原則を貫いてきた。激烈な労使紛争と無縁だったこともサムスンの強さの秘密の1つだった。

「無労組経営」のサムスンに労組が誕生

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サムスンに労組ができるかどうかは、韓国の経済・労働界の大きな関心事だった〔AFPBB News

 ところが、2011年7月1日の法改正で、労組が誕生してしまった。

 韓国の雇用労働部(日本の厚生労働省に相当)は2011年7月18日、サムスングループの社員4人が申請していた「サムスン労働組合」の設立を承認した。

 この労組は、グループの持ち株会社の役割も果たすサムスンエバーランドなどに勤務する社員が設立した。サムスングループ関連企業の社員などが加入できる「超企業組合」だ。

 創業者の強い「遺言」はあったが、サムスングループにまったく労組がなかったわけではない。

 だが、サムスングループが買収する以前の企業に労組があったサムスン生命保険(旧東邦生命)、サムスン証券(旧国際証券)や、組合員がわずか数人で「新たな労組設立を防ぐための御用組合」(韓国紙デスク)がある場合だけで、「経営側に対抗する形で労組ができたのは初めて」(同)のことだった。そういう意味で歴史的な労組結成だった。

契機となった労働法改正

 韓国では2011年7月1日に労働法が改正になった。その目玉は、企業内に複数の労組を設立することができるようになったことだ。

 これまでは認められていなかったため、会社側が御用組合をあらかじめ設立する例があり、労働者の権利が守られていないとの指摘を国際労働機構(ILO)などから受けていた。同時に、労組を簡単に設立することができるようになった。

 法改正を前に、経営側に対する強硬路線をとるナショナルセンターの民主労総などは、サムスングループに労組を設立する準備をしていた。労組の支持を受ける野党内には「サムスン労組設立支援センター」もでき、「サムスンに労組ができるか」が、韓国の経済・労働界の大きな関心事になっていた。