デジャブ(既視感)という言葉がある。歴史は繰り返されるとも言う。過去の出来事と全く同じ出来事が同じことが起こり得るはずもないのに、なぜ我々はこうした言葉に説得力を感じるのであろうか。人は時として以前経験した(あるいは経験したと思っている)事件が目の前で繰り返されていると感じる時がある。
グルジアの首都トビリシから約120キロのアハルカラキで、戦車の砲身を覆うロシア軍兵士(2006年5月15日撮影)〔AFPBB News〕
「トルコ軍もグルジア国境に集結していた」
筆者が昨年(2008年)11月にロシアとの紛争後のグルジアに赴いた際、親しい知人が漏らしたこの言葉が忘れられない。日本では、小国グルジアが北の旧宗主国ロシアに必死に抵抗する姿に注目が集まった。
しかし、軍の動きについて確認はできていないものの、南西に位置するもう1つの地域大国トルコの動きにも大きな注意が払われてしかるべきであろう。
トルコとロシアの蜜月
グルジア紛争からちょうど1年を経ようとする2009年8月6日、ロシアのプーチン首相はトルコを訪問し、首都アンカラでエルドアン首相と会談した。ここで、ロシアの主導するガスパイプライン「サウスストリーム」へのトルコの協力が表明された。ロシア側も黒海から地中海に抜ける石油パイプライン「サムソン・ジェイハン」への原油供給を約束した。
トルコのレジェプ・タイップ・エルドアン首相(上)とアブドラ・ギュル大統領(下)〔AFPBB News〕
ちなみにトルコのロシアに対する天然ガス依存度は6割に上る。またトルコにとってロシアは最大の輸出相手国でもある。NATO(北大西洋条約機構)陣営に与し、EU加盟を悲願とするトルコであるが、経済を中心に急速にロシアとの結びつきを深めつつある。
政治的な接近も見逃せない。トルコは世俗主義を標榜しながらも国民の大部分がイスラム教徒であり、現在のギュル大統領、エルドアン首相はともにイスラム的価値に大きな敬意を払っている。
2004年12月、機を見るに敏なプーチン大統領(当時)は、イラク戦争に対する国民の反発から米国との関係がぎくしゃくするトルコをいち早く訪問し、その後の協力関係の礎を築いた。実にこの訪問が、ロシアの国家元首による初めてのトルコ訪問であったという。
こうした両国の密接な協力関係は、昨年(2008年)のグルジア紛争の最中にも発揮された。8月13日にモスクワを訪れたエルドアン首相は、調停のために先に訪れていたフランスのサルコジ大統領を上回るもてなしを受けた。
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