第2四半期の成長率はマイナス10.9%

 世界的な大不況の中で、一部の国では景気回復の兆しが見られるようであるが、しかしロシアにおいては、景気回復はまだ先の話のようである。国家統計庁による速報値によれば、今年第2四半期の実質GDP成長率はマイナス10.9%と、マイナス9.8%を記録した第1四半期を下回る結果となっている。

 この景気後退の状況に際し、ロシア政府は大規模な歳出の増加を伴う危機対策を実施に移している。ところが、一連の財政支出の急増に対し、IMF(国際通貨基金)が批判的な見解を表明した。

危機対策に対するIMFによる批判

 8月7日付でIMFが発表した「Public Information Notice」および「Survey Magazine」によれば、IMF理事会はロシアの現下の経済政策について、4条コンサルテーション(IMFが加盟国に対して実施している政策評価)の結果に基づき、次のような評価を下している。

 まず金融部門については、銀行システムの健全性を回復させるために、大手行に対するストレステストなどを含む形での、先取り的かつ協調的なアプローチを取るように勧告している。また、政策金利の引き下げなどの金融緩和策については、当面は許容できるとの評価が下された。

 しかし、財政面では歳出規模の急激な拡大に懸念が表明されたうえで、財政による刺激策の縮小および効率化が推奨されている。

「国家資本主義」化の動き

 上記のIMFによる歳出規模拡大に対する批判の背景には、ロシアの経済において国家による活動の占める比率が高まってきていることを指摘できる。

 ロシア政府においてマクロ経済政策を担当する経済発展省のクレパッチ次官は、ロシアの経済活動において国家の占める比率が国内総生産(GDP)比で45~50%に上るという同省の推計値を明らかにしている(7月3日付イズヴェスチヤ紙等)。

 同次官によれば、その中には、「国家コーポレーション」 *1による活動や、ガスプロム、ロスネフチ、ズベルバンクなど、国家が株式の多くを所有する国営系巨大企業の活動が含まれているとのことである。

*1=戦略的に重要な部門の強化ないし再編を実施するためのツールとして、特別法に基づいて設けられた国営企業を指す。「国家コーポレーション」は現在、ロステフノロギイ(=ロシア最大の自動車メーカーであるアフトヴァズ社等を支配下におく巨大持株企業)、ロスナノ(=ナノテクノロジー分野)、オリンプストロイ(=2014年開催予定のソチ五輪の施設建設を担当)、開発・対外経済銀行、ロスアトム(=原子力関連)、住宅公共事業改革促進基金、預金保険機構の全7社で構成されている