日本の捕鯨が生き延びる道はこれしかない

南極海の調査捕鯨は縮小し、地域捕鯨の復活を

2011.07.20(Wed) 高成田 享
筆者プロフィール&コラム概要

鯨売り胴につくうち銭を待ち
鯨売り銭は明日と置いて逃げ

 いずれも柳多留の句で、江戸の庶民にもなじみ深かったのかもしれないが、もはや現代日本の若い世代にとって、鯨食は食文化とは言えない。「俺たちが若い頃は、給食で鯨の竜田揚げを食ったものだ。栄養失調になるから鯨の肝油だって飲まされた」なんて言ったところで、中高年のノスタルジアにすぎなくなっている。

 とはいえ、鯨肉が食文化として定着しているところもある。石巻の人々は、こぞって、鯨肉の刺身を食べる。鮮魚店では「生クジラ」として、近海のミンククジラを販売しているし、寿司屋も生クジラの握りを出す。

 消費者の需要トレンドから見れば、南極海での捕鯨は縮小しても、沿岸捕鯨が確保されれば、いずれ間に合う時代がすぐそこまで来ている。

 それでも、国内に捕鯨支持派が多いのは、鯨肉の需給の問題ではなく、外国からの圧力によって、日本の食文化が否定されることへの反発というか、プライドの問題があるからだろう。「自分は食べないけれど、反捕鯨団体や反捕鯨国の圧力で正当な調査捕鯨をあきらめるのは納得できない」という人が多いのだ。

捕鯨を巡る対立の最終的な落とし所とは

 日本の進むべき道は、はっきりしていると思う。南極海での捕鯨を縮小しながら、地域の食文化に根差した沿岸捕鯨を「持続可能な漁業」にしていくことだ。

 IWC(国際捕鯨委員会)で、すんなりと沿岸の捕鯨が認められるとは思わない。しかし、南極海での捕鯨縮小と沿岸捕鯨の再開というのが最終的な「落としどころ」であることは、反捕鯨国も分かってきていると思う。

 そうなった場合、標的を失ったSSは、沿岸捕鯨の妨害に来るかもしれない。その時は、今度こそ巡視船を出して、SSを逮捕したらいい。排他的経済水域での漁業活動の妨害を阻止する行動はいくらでもできるはずだ。時計の針を戻してはならない。

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1948年生まれ。東京大学経済学部卒業。71年に朝日新聞社に入社。山形・静岡支局員、東京経済部員、アメリカ総局員(ワシントン)、経済部次長、アメリカ総局長(ワシントン)、論説委員などを歴任。96年から97年にかけてテレビ朝日「ニュースステーション」キャスターを務める。定年後にシニア記者として2008年1月より2011年2月まで石巻支局長。2011年4月より仙台大学教授。仙台白百合女子大学非常勤講師、前橋国際大学客員教授。農林水産省太平洋広域漁業調整委員会委員。主な著書に『ディズニーランドの経済学』(共著)、『アメリカの風』、『アメリカ解体全書』(共著)、『榎本武揚』(共編著)、『こちら石巻 さかな記者奮闘記』『話のさかな・コラムで読む三陸さかな歳時記』(共編著)などがある。


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