日本の捕鯨が生き延びる道はこれしかない

南極海の調査捕鯨は縮小し、地域捕鯨の復活を

2011.07.20(Wed) 高成田 享
筆者プロフィール&コラム概要

 東日本大震災で宮城県石巻鮎川を拠点とする沿岸捕鯨は大きな打撃を受けた。

 鮎川港が地盤沈下で一時使用できなくなった上、ここを母港とする鮎川捕鯨の捕鯨船3隻、事務所、クジラの解体処理場などが被災した。幸い、被害が軽微だった2隻の捕鯨船は復帰しそうだ。

 筆者は今、水産庁の鯨類捕獲調査に関する検討委員会の委員として、今後の捕鯨のあり方について議論をしているが、南極海での調査捕鯨についての見通しは極めて暗い。

 反捕鯨団体「シー・シェパード」(SS)の妨害行動によって、昨シーズンはほとんど捕獲調査ができずに帰港した。今秋からの調査も、昨シーズンと同じ結果になる可能性が高いからだ。

SSの妨害行動に対して巡視船を派遣すべきなのか

 検討委の座長である筒井信隆・農林水産副大臣は、今秋からの調査に巡視船の出動を求めている。南極海での捕鯨を「正当な調査活動だ」と主張する日本の立場を貫くために巡視船の派遣というのは、世論受けするのかもしれないが、これにはいくつもの問題がある。

 第1に、国際的な正当性の問題が立ちはだかる。日本の国民から見ると、SSの行為はテロリストの海賊行為だが、反捕鯨国が多い欧米や豪州から見れば、SSは跳ね上がりの環境運動という程度で、海賊とは見なされない。

 このため、もし巡視船がSSの抗議船に実力行使をすれば、こうした国々を中心に日本が非難されることになる。

 第2は、巡視船対抗議船では、「大人と子供のけんか」に見えるが、やっかいなのは、抗議船の方が速度や運動性が優れているため、撃沈でもしない限り、巡視船が警備しても、捕鯨活動を続けるのは難しいのが実情だという。

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1948年生まれ。東京大学経済学部卒業。71年に朝日新聞社に入社。山形・静岡支局員、東京経済部員、アメリカ総局員(ワシントン)、経済部次長、アメリカ総局長(ワシントン)、論説委員などを歴任。96年から97年にかけてテレビ朝日「ニュースステーション」キャスターを務める。定年後にシニア記者として2008年1月より2011年2月まで石巻支局長。2011年4月より仙台大学教授。仙台白百合女子大学非常勤講師、前橋国際大学客員教授。農林水産省太平洋広域漁業調整委員会委員。主な著書に『ディズニーランドの経済学』(共著)、『アメリカの風』、『アメリカ解体全書』(共著)、『榎本武揚』(共編著)、『こちら石巻 さかな記者奮闘記』『話のさかな・コラムで読む三陸さかな歳時記』(共編著)などがある。


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