トヨタ自動車「プリウス」の受注が20万台を超えたほか、ホンダ「インサイト」の販売好調も続き、日本の自動車を巡る話題はハイブリッド一色の感が強い。また、ハイブリッド向けのバッテリー開発や、次世代電気自動車(EV)を巡る報道も活発だ。

 しかし、ハイブリッドやEVだけが次世代のクルマ社会を担うコアな技術なのか。

 クルマ好きではあるがエンジンの構造やパーツの詳細に疎い筆者は、専門家に話を聞いてみた。

 すると、巷間伝わっている報道とは違った答えが返ってきた。専門家たちは一様に「ハイブリッドやEVへの過度の依存は危険」と指摘したのだ。

既存パワートレインを磨け

 「昨夏のガソリン高騰の影響を受け、米国市場では雪崩を打ったように小型車へのシフトが起きたが、この傾向が続くことは絶対にない」・・・。

 ハイブリッドカーの将来、そして日本メーカーの世界市場での先行きを筆者が尋ねた時、ある自動車アナリストは開口一番、こう答えた。

 このアナリストは、「今でも大多数の米国人が欲しているのは、力強い大型タイプのクルマ。昨年のガソリン高騰で旧プリウスやフィットなどの小型車に買い換えたとしても、一時的に乗っているにすぎない」と断言した。「大型にもかかわらず小型車並みの燃費のクルマが出てくれば、小型車からの逆シフトが起こり得る」と言うのだ。

 ならば大型車のシャーシ(車体)にハイブリッドエンジンを載せてしまうのが、米国市場に一番適しているのではないか。筆者がそう問い返すと、ハイブリッドは開発コストが割高のため、トヨタやホンダでもそう簡単には適応できないのだという。

 「ハイブリッドやEVが世界市場全体に浸透するには、まだまだ相当な時間を要する。既存のパワートレインを改良し続けることが肝要」だとか。

 既存のエンジンは開発され尽くしたものと思い込んでいた筆者に対し、同氏は「直噴エンジンやターボ、スーパーチャージャーなどの過給器、あるいはデュアルクラッチ(DCT)などまだまだ開発途上の分野はたくさんある」と言う。

 ならば「世界的に高い技術力で定評のある日系メーカー、あるいは系列部品メーカーは優位に立てるのではないか」と問い返すと、同氏はたちまち顔をしかめた。