政府が議論を続けている「社会保障と税の一体改革」の最終案の調整が続いています。財源不足は待ったなしの状況であり、担当する与謝野馨経済財政相は「最低でも2015年に(税率引き上げ幅が)5%ないと、社会保障も財政ももたない」と発言しています。
経済状況が好転してから増税すべきだという意見もあり、「2015年度までに」消費税率を10%引き上げ、「2025年度までに」20%引き上げ、という増税の時期が焦点になっているようですが、それよりもこの議論の中でもっと注目してほしい部分があります。
それは、消費税の増税が行われようとしているだけでなく、社会保障費の給付を2015年度までに1兆2000億円抑制する案が盛り込まれていることです。
大幅な増税を行った上に、給付抑制をしなければならないという不都合な現実が、ほとんど報道されていないのではないでしょうか。
医療費にかかる消費税はすべて医療機関が負担している
まず、社会保障整備の財源に充てられるであろう消費税と、医療費の関係について整理しておきましょう。
あまり知られていませんが、医療費は消費税非課税です。
消費税は、通常の業種であれば消費者に転嫁され、企業が負担するものではありません。けれども日本の医療や介護の料金は保険点数で金額が定まっている上に、消費税非課税であるため、医療材料や薬、外注委託費などに発生する消費税分を利用者から回収することはできません。
結局、消費税金額はすべて医療機関が負担する構造になっているのです。
今回、消費税が増税されるとするならば1994年以来のこととなりますが、この15年以上の間に状況は大きく変わっています。
診療報酬の本体部分が数%ずつ増額されていた時代であれば、消費税金額は保険点数内で吸収することができたでしょう。けれども小泉政権の2002年度以降の医療費マイナス改定で、医療費はずっと下がっていました。民主党が政権を取った2010年度にも、改定幅がほぼマイナスゼロになっただけなのです。