南シナ海における中国とベトナムの対立がクローズアップされている。
ベトナムでは3週連続で「反中国デモ」が繰り広げられた。さらにベトナム政府は6月13日、中部クアンナム省沖合の南シナ海で、実弾演習を実施。1979年の中越戦争以来となる「徴兵令」も施行(発効は8月から)し、中国に対して一歩も引かない構えを見せている。
背景にあるのが南シナ海の領有権問題であることは言うまでもない。ただし、今回の緊張は去る5月末、ベトナム中南部沖から約120キロ、中国の海南島から南に約600キロ離れた地点でベトナムの探査船が海底資源調査を行っていたところ、中国の監視船がこれを妨害し、資源調査のケーブルを切断したことがきっかけである。
フィリピンも同様の問題に直面していた。フィリピンの場合、今年3月に同国の石油探査船が中国の監視船に妨害されたことや、同国が主権を主張する南沙諸島海域で、中国が新たな建造物の基礎工事を開始したことに対する反発と批判が高まっていた。
米国がベトナム、フィリピンと合同軍事演習
ベトナムにせよ、フィリピンにせよ、軍事力では中国に到底かなわない。かなわないのを承知で中国に反発するのは、米国への期待があるからだろう。
2010年7月、ASEAN地域フォーラム(ARF)に出席したクリントン国務長官が、「南シナ海における航行の自由は米国の国益だ」と述べ、南シナ海の領有を強く主張するようになった中国を牽制した。それ以来、南シナ海についても米中の意見の対立が表面化していた。
同年8月には米海軍のイージス駆逐艦「ジョン・マケイン」と空母「ジョージ・ワシントン」が南シナ海に入り、ベトナムとの合同軍事演習さえ行われた。2011年も7月に米・ベトナム合同軍事演習が予定されている。その直前に当たる6月末には、米海軍のイージス駆逐艦2隻が参加し、フィリピン海軍と合同軍事演習が予定されている。
こうして米国が中国を牽制するためにベトナム、フィリピンとの連携を強めれば、日本、韓国、さらに台湾と繋がり、米国の対中包囲網の強化に帰結することは論をまたない。