前稿で述べた通り、20世紀末に構想され始めたRMA(軍事分野における革命=Revolution in Military Affairs)は、実はロシアが、正確に言えばソ連邦がその先鞭をつけた。

RMAの基本的構想

 しかしながら、これを実現するための財政的余裕がソ連にはなかったこと、ペレストロイカを通じてソ連崩壊という未曾有の国難や政治的混乱が発生したこと、この混乱に伴う経済的破綻を現実の姿として世界に露見したことなどから、ロシア連邦成立初期にはとても軍事革命(RMA)を推進することができなかったというのが真実だと言えよう。

F117ステルス戦闘機、完全退役へ

湾岸戦争でバグダッドの中心部爆撃に中心的役割を演じたF117 ステルス戦闘機〔AFPBB News

 他方、米国は1991年の湾岸戦争でRMAの本質が具現化され、新たな21世紀のRMAが始まったことを強く意識するとともに、これを“トランスフォーメーション”と名づけて、軍事分野における大規模な革命的変革を推進することとなったのである。

 その興奮を伝える報道として有名なのは、ニューヨーク・タイムズに掲載された次のような記事であった。

 すなわち、GPS誘導爆弾JDAM(Joint Direct Munitions)が初めて利用された湾岸戦争での成果を、「湾岸戦争においてたった1トンの爆弾で破壊できた目標は、ベトナム戦争時代の「F-105戦闘爆撃機」に搭載されたテレビ誘導等による爆弾で破壊すれば190トンを必要とし、第2次世界大戦で使用された「B-17」に搭載された照準具によって誘導された爆弾では9000トンも必要とした」との表現で誇示したのであった。

 だがRMAは決して衛星誘導爆撃の具体化だけにとどまらない。RMAの範囲は広く、ITの軍事分野への導入から陸・海・空軍の役割分担の変化、各軍編制の革命的変化、軍隊の統合運用(Small J)のみならず、その他の省庁や機関との統合(Big J)等々に及んでいるのである。

 これらについては、拙稿「激変する現代戦争の実態について」「新たな戦争の実相と広がりについて」「軍事革命と社会への影響」に詳しいので、ここでは詳細な説明を割愛することとする。

 しかしながら、RMAの発端となった衛星誘導爆撃のためのアセットとしては、(1)地球上の1点をデジタル化して目標位置を明確に表示するシステム、(2)高度1万メートルから投下され移動する通常爆弾の空間における位置を特定するための測位衛星システム(米国ではGPS、ロシアではGLONASS)、そして、(3)爆撃の主体となる通常爆弾を運搬する飛翔体、が必要であることは言うまでもない。