読者の中には「中国株式会社」なる切り口自体に違和感を感じる方もおられるようだ。当然だろう。「政経一体」の中国になぜ「株式会社モデル」が妥当するのかという至極真っ当な疑問である。今回は筆者がそれでもあえて「中国株式会社論」を唱える理由を2回に分けて詳しくご説明したい。
世界中で混乱する対中国認識
多くの読者にとって世界金融危機後の中国経済は大きな関心事だと推察する。中国と商売をしている世界中のビジネスパーソンにとって、中国の5年後、10年後を見通すことは死活的に重要であろう。私たちにとって最大の問題は、識者や専門家の間でも明確なコンセンサスがないことだ。
エコノミストの中には、何が起きようと中国経済の成長は続くとする楽観論と、政治的、社会的理由により経済成長はいずれ頭打ちになるとの悲観論が並存する。チャイナウォッチャーの間でも、共産党の一党独裁は当面安泰だとする説と、生活水準の向上がいずれは政治の民主化を促すと見る説が拮抗している。
現在の経済的繁栄が民主化を促進しているとは思えないが、さりとて社会的変化が皆無というわけでもない。一体どちらの見方が中国の実態に近いのか。ここでは結論を出す前に、現在巷に氾濫する様々な「対中認識」を整理することから始めたい。読者の皆さんがイメージする中国は次のどれに近いだろうか。
様々な中国の発展モデル
日本国内には、1950年代から続く「親中派」、日和見的な「媚中派」から1990年代以降中国での反日運動に触発された「嫌中派」、戦前からの筋金入りの「反中派」まで実に様々な見方がある。また、米国でも国務省、国防省、中央情報局(CIA)、連邦捜査局(FBI)、多国籍企業等の大企業、地元の零細企業など立場によって対中認識は大きく異なる。
これらの見解は毎日のようにマスコミを通じ世界中に発信されている。しかも、いずれももっともらしく、それなりに説得力があるので、私たちのような一般人は消化不良を起こし、皆困ってしまうのだ。ここでは単純化をお許し頂き、中国の将来についての様々な見方をいくつかの類型に分類してみたい。