撮影:榊水麗

 世界的な健康志向の高まりや世界保健機関(WHO)の規制強化により、アルコール市場の縮小が懸念される中、キリンホールディングス(HD)は次なる成長の柱として「ヘルスサイエンス(HS)事業」の拡大を図っている。その実現に向けて、同社が着手したのはグループ海外拠点の管理体制の刷新だ。この改革の狙いはどこにあるのか。具体的に何を刷新するのか。取締役副社長CPO(グループ人財統括)の坪井純子氏、取締役常務執行役員CFOの秋枝眞二郎氏、財務戦略部長の松尾英史氏、そして経済産業省による「グローバル競争力強化に向けたCX研究会()」の座長を務めた日置圭介氏が、その狙いや改革の中身について語り合った。

※CX=コーポレートトランスフォーメーション:企業変革

飲料事業とは異なる「グローバル経営」が必要だった

──キリンHDでは、酒類・飲料事業、医薬事業に続く「第3の柱」として、健康食品をはじめとしたHS事業の強化に力を入れています。その実現に向けて、なぜグループ海外拠点の管理体制を再構築する必要があったのでしょうか。

秋枝眞二郎氏(以下、敬称略) キリングループは海外売上高比率が5割を超えており、多くの海外拠点を有しています。それらの拠点については、これまで各リージョン(地域)にある程度の自律性を持たせて経営する形を取ってきました。

キリンホールディングス 取締役常務執行役員 CFOの秋枝眞二郎氏

 多数の海外拠点を持つグループ企業において、それらを本社が統合的に管理するのか、それとも各拠点に自律性を持たせるのかという議論は尽きません。キリングループについては、後者の色合いが強かったといえます。

 その理由として、当社の主力商品である酒類や飲料は、地域によって嗜好(しこう)や文化が大きく異なるため、エリアごとに扱うブランドや取るべきビジネス戦略が変わるという背景がありました。加えて、商品を輸送する際に重量もかかるため、なるべくマーケットの近くで製造して販売する「地産地消型ビジネス」の方がコスト面でも優位性が高かったのです。こうしたことから、リージョンごとに自律的に運営する形がよいと考えてきました。

 一方、HS事業においてはこうした前提が大きく変わります。