イトーキ代表取締役社長の湊宏司氏(撮影:宮崎訓幸)

 オフィス家具のイトーキは、約135年の歴史の中で初の外部出身トップとして日本オラクルから湊宏司氏を招へいし、業績回復を果たした。オフィス家具を売るだけでなく、顧客の生産性向上に結び付ける手法を導入したことで、ビジネスの在り方を根本から変えることに成功した。湊氏が進めてきた改革と、データを活用した新たなオフィスの空間づくりについて話を聞いた。

価格競争を抜け出す鍵は「家具」ではなく“働き方”だった

──最初にイトーキに来られた時はどんな印象でしたか。

湊宏司氏(以下、敬称略)イトーキは1890年創業の会社ですが、2019年、20年と2年連続赤字だったため、復活に向けて外部から社長を招き入れようということで私に声がかかりました。

 私が2021年に入社した時の第一印象をマイナス面から言うと、「当たり前のことができていない」と感じました。例えば、私が入社する前は業績の下方修正を繰り返すなど、計数管理がしっかりできていませんでした。

 一方、ポジティブな面としては、社員が優秀だったことです。目が生き生きしているし、いろんなことに挑戦したいという意欲が見えました。そうした社員のポテンシャルを引き出せば、伸びしろはあると思いました。当時はものが言いにくい雰囲気もありましたし、頑張っても頑張らなくても評価は変わらない、前例踏襲していればよい、といった感じの悪い平等主義がはびこっていたと思います。

──そうした課題に対して、どのように切り込んでいったのでしょうか。

 全国の拠点を回ってタウンホールミーティングを行い、社員とコミュニケーションを取ることから始めました。130年以上の会社の歴史の中で初めて外部から来たトップとして、まずは私のことや、こんな会社にしたいという考えを知ってもらう必要があったからです。

 その場では、2期連続赤字になって危機感を持っている社員もいれば、会社は絶対につぶれないと考えている社員もいましたね。

全国各地のタウンホールミーティングには毎回多くの従業員が参加する。写真は2026年2月の本社タウンホールの様子(写真提供:イトーキ)

──コロナ禍真っただ中で厳しい事業環境でもあったと思います。