出所:共同通信イメージズ
トヨタが世界市場で高い品質と耐久性の評価を得るまでには、経営の根幹を揺るがすような判断の積み重ねがあった。環境も市場も異なる中で、何を優先し、どの道を選ぶか――。企業の成否を分けるのは「大元の判断だ」と語るのは、神戸大学名誉教授の三品和広氏だ。2025年8月に著書『通史で読み解く自動車の未来』(東洋経済新報社)を出版した三品氏に、トヨタの軌跡に見る大局的戦略の重要性について聞いた。
自動車業界の動向は「日本にとって一つの剣が峰」
――著書『通史で読み解く自動車の未来』では、自動車業界を題材として、経営者が持つべき大局観について解説しています。なぜ、自動車業界をテーマに選んだのでしょうか。
三品和広氏(以下敬称略) まず、自動車が日本を代表する最も有力な産業だからです。自動車が傾くと、日本経済全体が傾くともいえる重要な産業です。
何より、日本は「ものづくり」を大切にしてきた国ですから、その頂点に立つ自動車産業の動向は看過できないでしょう。自動車がこの先どうなるかは日本にとって一つの剣が峰、という認識で本書を執筆しました。
また、私自身が自動車業界の企業に関わる機会が多く、各社の幹部の方々から直接学ばせていただいた産業だったため、深い愛着があることも、自動車業界を選択した理由の一つです。
自動車産業はBtoCビジネスの代表格であり、多くの読者にとって身近な存在です。そのため、半導体のようにBtoBかつ技術的に複雑な分野と比べて、日常的な接点が多く、読者の理解を深めやすいと考えました。こうした点から、戦略論を考察する上で、自動車ほど適した事例はないと判断しました。






