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かつて世界第2位の経済大国だった日本が、名目GDPで中国、ドイツに抜かれた。中小企業の割合など共通点が多いドイツと日本だが、なぜこれほどの差がついたのか。10年以上にわたるドイツ現地取材をまとめた『高く売れるものだけ作るドイツ人、いいものを安く売ってしまう日本人』(岩本晃一著/朝日新聞出版)から、一部を抜粋・再編集。
研究機関と連携して人工心臓弁を開発し、患者の負担を大幅に減らしたイエナバルブ。地域のネットワークを生かし、風力発電の新たなビジネスモデルを世界に広げるwpd。両社が示すドイツ企業の多様な戦略とは?
フラウンホーファー研究機構の支援で新製品を開発
――イエナバルブ社
『高く売れるものだけ作るドイツ人、いいものを安く売ってしまう日本人 』(朝日新聞出版)
次は、フラウンホーファー研究機構の支援で新製品を開発した企業の事例である。フラウンホーファー研究機構については、次章で詳説しているが、これは同機構の存在意義を端的に示している事例でもある。
イエナバルブ(JenaValve)社は、人工心臓弁とその挿入用機材を生産販売する企業であり、訪問したときには従業員68人を雇用していた。本社・工場は、ドイツ・バイエルン州ミュンヘン郊外に立地している。海外拠点は、オーストリア、スイス、イタリア、フランスにある。売上高は公開していない。
特許を400件もつ同社は、2人の大学教授によるアイディアを製品化するために2006年に設立された。フラウンホーファー研究機構の支援による共同開発で、プロトタイプの開発がなされた。
会社設立当初は、ドイツ連邦政府のファンドで運営されたが、やがて同社の将来性に着目した民間のファンド企業から資金提供があり、2010年の段階で世界のファンド企業10社から8000万ユーロの資金が集まった。
欧州市場には、2007年に初の製品投入を行い、2012年には同市場で500万ユーロの売上高となった。ドイツでは人工心臓弁市場の43%のシェアを確保していた。
米国市場では、デラウェア州ウィルミントンに拠点を設立し、2011年に当局から承認を受け、翌年には売上高が対前年比24%、2013年は同35%という伸びを示していた。






