ドイツのヴィットリヒ財団の評議員会議長を務めていたハーマン・サイモン氏(写真右)
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 かつて世界第2位の経済大国だった日本が、名目GDPで中国、ドイツに抜かれた。中小企業の割合など共通点が多いドイツと日本だが、なぜこれほどの差がついたのか。10年以上にわたるドイツ現地取材をまとめた『高く売れるものだけ作るドイツ人、いいものを安く売ってしまう日本人』(岩本晃一著/朝日新聞出版)から、一部を抜粋・再編集。

 高いポテンシャルを持ちながら、生かし切れない日本企業。成長を阻む要因を、ドイツ有数の経営思想家が読み解く。

会社内に閉じこもる日本企業

『グローバルビジネスの隠れたチャンピオン企業』の著者ハーマン・サイモン氏が、2012年、経済産業研究所に来訪され、講演を行った。その中の日本企業への教訓から要約して中身を紹介したい。

 日本の中小企業は海外に目を向けず、むしろオペレーション面や効率性に気をとられている。企業文化、リーダーシップのスタイル、言語に関しては、依然としてかなり日本中心である。非常にリスク回避的であり、この姿勢が組織が新しいことを習得することを大きく妨げている。

 それに比して、ドイツの隠れたチャンピオン企業は、より多くの外国人を雇用し、責任をもたせている。

 日本の中小企業の多くは、隠れたグローバル・チャンピオン企業になるだけの能力と技術力をもち合わせている。しかしながら、ドイツのそれのように、精力的、迅速に国際化を進めていないため、潜在力を十分に活かせていない。日本は自己抑制によって、グローバリゼーションの進展につながる多くのチャンスを逃している。

 ドイツの隠れたチャンピオン企業は、日本の中小企業や若くて野心的な起業家が同じような戦略を追求するうえで、ロールモデルとなりうる。

 これがサイモン氏の提言だが、頷く読者が多いのではないだろうか。