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 かつて世界第2位の経済大国だった日本が、名目GDPで中国、ドイツに抜かれた。中小企業の割合など共通点が多いドイツと日本だが、なぜこれほどの差がついたのか。10年以上にわたるドイツ現地取材をまとめた『高く売れるものだけ作るドイツ人、いいものを安く売ってしまう日本人』(岩本晃一著/朝日新聞出版)から、一部を抜粋・再編集。

 ドイツの隠れたチャンピオン企業は国際競争力を保つために何をしているのか。生産、研究、経営に関する5つ視点から、強さの秘密に迫る。

自社開発の新製品で国際競争力を獲得
―― シュレッター社

 まず、自社開発の新製品で国際競争力を獲得した企業の事例である。

 本社をバイエルン州のキルヒドルフに置くシュレッター(Schletter)社は、太陽光パネルの支持構造物を主力製品とする企業であり、年間売上高は約3億ユーロ、従業員1200人を雇用する。工場も本社と同じくキルヒドルフにある。海外拠点は、欧州各国のみならず、オーストラリア、中国、韓国、南アフリカ、トルコ、日本(横浜)にあった。

 同社は、1968年に創業し、スチール・アルミの金属加工業で地域に根付いた中小企業として運営されてきた。1998年に創業者の息子が後を継いで2代目社長となった。2000年、品質マネジメントシステムに関する国際規格(DIN EN ISO 9001:2000)を取得、2001年に太陽光パネルの支持構造物分野に参入して以降、世界的な太陽光ブームに乗って急成長した。

 太陽光パネルに参入したとき、従業員は50〜60人、当初の売上高は1500万ユーロであったが、いずれも20倍に増えていた。

 これまで同社の製品を用いて実用化した太陽光パネルは1500MW(メガワット)である。2014年7月に訪問したとき、工場を新しく建て替えた直後で、明るく快適な空間であった。また本社の後ろに、自社製品を使った太陽光パネル3.5MWを設置し、訪問者にアピールしていた。

 2005年に初めて外国市場としてイタリアに進出した。その後、2008年にアメリカ、2009年にフランス、ギリシャ、スペイン、2010年にオーストリア、中国、英国、韓国、2012年に南アフリカ、トルコ、日本へと進出した。各国に進出した背景としては、ドイツ市場だけに依存するのは危険であり、各国に展開することで企業の安全性を確保しているということだった。