写真提供:共同通信社/日刊工業新聞/共同通信イメージズ

 上場企業には人的資本に関する情報開示が求められるようになった。しかし「人的資本経営」は、単に「人を大事にする経営」としばしば取り違えられている。本稿では『5000の事例から導き出した「人的資本経営大全」』(田中弦著/東洋経済新報社)から一部を抜粋・再編集。成功企業の事例を元に、企業価値を高める人的資本経営のポイントを考える。

 企業が持続的に成長する鍵は、経営戦略と人材戦略の連動にある。双日とエーザイの事例を元に、2つの戦略を結び付ける実践のヒントを探る。

「その会社ならでは」のKPIを設定することの大切さ
―― 双日

 総合商社・双日株式会社を見ていきましょう。

 多くの有価証券報告書を見ていると、ある見方がごっそり抜けている企業が多いことに気づきます。

 それは、「その会社ならでは」という視点です。

 たとえば人材ポートフォリオは、「その会社にどんな人材が必要になるか」が各会社で異なっているため、本来であれば必然的に「その会社ならでは」の指標が必ず含まれることになるはずです。

 ところが、そこまで詰め切れていない企業が多い。

 この事実を確認したうえで、双日の有価証券報告書を見てみましょう。

 下の図7-10をよく見てください。「挑戦指数」 と 「風通し指数」 という指標があります。