写真提供:日刊工業新聞/共同通信イメージズ
上場企業には人的資本に関する情報開示が求められるようになった。しかし「人的資本経営」は、単に「人を大事にする経営」としばしば取り違えられている。本稿では『5000の事例から導き出した「人的資本経営大全」』(田中弦著/東洋経済新報社)から一部を抜粋・再編集。成功企業の事例を元に、企業価値を高める人的資本経営のポイントを考える。
三井化学は、将来のトップ人材を見据えた独自のキータレントマネジメントを導入し、着実に経営者候補を準備している。その仕組みとは?
「キータレントマネジメント」という独自の後継者育成
―― 三井化学
『5000の事例から導き出した「人的資本経営大全」』(東洋経済新報社)
サクセッションプラン(=後継者育成計画)に工夫をこらしている好例としてあげたいのが、三井化学株式会社です。
同社は 「キータレントマネジメント」 という施策を行っています。キータレント、つまり 「将来の経営者となり得るリーダー候補」 たち(グループ社員全体の約2%にあたる)を特別に育成していくというのです。
また同社は、戦略を遂行していくうえで外せない「戦略重要ポジション」や、さらなる選抜を受けた経営者候補たち(グループ社員全体のおよそ0.5%にあたる)を育てることを目的とした「育成ポジション」を120程度定め、各ポジションの後継者を個別具体的に育てています。
これだけでも、ユニークな取り組みだと思われた人がいるかもしれません。
ですが、おもしろいのはここからです。
先に述べたおのおのの「戦略重要ポジション」には 「後継者候補準備率」というKPIが設けられています。
「三井化学レポート2023」の「人材ポートフォリオ」を見てみましょう。
そこには2022年度の「後継者候補準備率」が211%だったと記載されています。






