写真提供:日刊工業新聞/共同通信イメージズ

 上場企業には人的資本に関する情報開示が求められるようになった。しかし「人的資本経営」は、単に「人を大事にする経営」としばしば取り違えられている。本稿では『5000の事例から導き出した「人的資本経営大全」』(田中弦著/東洋経済新報社)から一部を抜粋・再編集。成功企業の事例を元に、企業価値を高める人的資本経営のポイントを考える。

 安川電機やマネーフォワードは、「女性管理職比率を高める」という最終ゴールに直結する「中間KPI」を設定し、着実な成果につなげている。両社の実践から学べることは何か。

より変動しやすい指標を中間KPIに設定する
── マネーフォワード

 株式会社マネーフォワードは、経営上の意思決定に「多様な視点」を取り入れるため、女性の意思決定者を増やすことを課題としていました。

 そのときに「女性管理職比率を○%に上げる」といった目標を設定すれば、それはKGIとなります。そしてそれは「比較可能指標」でもあります。

 同社はもともと、柔軟な働き方の実現や女性活躍推進に積極的に取り組んできました。

 では、同社は、具体的に何を「中間KPI」に設定したのでしょうか。同社のグループサーベイを見てみます。

 そのなかに、「管理職やいまよりも大きな責任を負う業務をオファーされたらやってみたいと思うか?」といった設問があります。

 同社は、その設問の回答を数値化し、男女別の平均スコアを算出して指標にしました。

 つまり 「チャンスがあれば、より責任を負う業務や管理職を担ってみたい」という意欲が、男女別でどのように変化するかを追いかけることにしたのです。

 ちなみに2022年8月時点で、同社のこのスコアは男性が4.2、女性が3.8だったそうです。

「管理職を担ってみたい」という意欲について、男性に比べて女性が0.4ポイント下回ったということです。