写真提供:日刊工業新聞/共同通信イメージズ
2030年、バブル世代が大量退職を迎え、属人的なノウハウに依存してきた営業現場は、深刻な危機に直面する。この状況を乗り越えるには、社内に眠る「営業の知」を掘り起こし、経営資源として位置付けることが欠かせない。本稿では『2030年の営業』(水嶋玲以仁、天白由都、深瀬正人著/日経BP 日本経済新聞出版)から内容の一部を抜粋・再編集。企業の取り組み事例から、「営業の知」を手にするための道筋を探る。
今回は、自らを自社製品の最初の顧客とする「クライアント・ゼロ」の下、NECが生成AIにより業務改革を進めた事例を取り上げる。
■「技術+ノウハウ+使い方の背景」をまとめて提供
『2030年の営業』(日経BP 日本経済新聞出版)
「クライアント・ゼロ」は、単に「技術の先行事例を社内でつくり、それをお客様に共有する」という枠にとどまるものではありません。NEC自身が、経営や営業の現場にさまざまな悩みを抱える一企業として、まず自らの課題と向き合う視点を起点に据えていることが、最大の特徴です。
技術は単なるツールではなく、現場で起きている経営課題をどう乗り越えるか、という「シナリオ」の中でこそ意味を持ちます。NECは、そこで得た知見や改善の工夫を、技術そのものに加えて「その技術をどう使えば課題を超えられるのか」という実装ノウハウと一緒に提供していきます。だからこそ、NECの「クライアント・ゼロ」は同じような悩みを持つ顧客に対して、「技術+ノウハウ+使い方の背景」をひとつのストーリーとして、丸ごと届けることができるのです。
こうした変化をさらに加速しようと2024年5月に打ち出されたのが、お客さまの変革を成功へ導く価値創造モデル「BluStellar(ブルーステラ)」です。BluStellar は、お客さまの経営課題に対して、AI、セキュリティなどNECの先進的なテクノロジーと「クライアント・ゼロ」からなるビジネス変革の知見・経験を「シナリオ」「オファリング」として整理。構想/戦略策定から最先端テクノロジーの実装までEnd to Endで価値を創出するサービスモデルです。
「クライアント・ゼロ」とは、NECが社内に眠る知を回収し、プロダクトに活かし、営業的価値に翻訳するまでのプロセス全体に責任を持とうとする構えであり、NEC自身が挑む“営業の知の再設計”にほかなりません。ここからは、「クライアント・ゼロ」の思想を軸に、NECの現場がどのように変わっていったのかを紹介していきます。








