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2030年、バブル世代が大量退職を迎え、属人的なノウハウに依存してきた営業現場は、深刻な危機に直面する。この状況を乗り越えるには、社内に眠る「営業の知」を掘り起こし、経営資源として位置付けることが欠かせない。本稿では『2030年の営業』(水嶋玲以仁、天白由都、深瀬正人著/日経BP 日本経済新聞出版)から内容の一部を抜粋・再編集。企業の取り組み事例から、「営業の知」を手にするための道筋を探る。
今回は、ソフトバンクの営業現場自らが生成AIを活用した営業活動支援ツールを生み出し、組織的な変革へと発展させた事例を取り上げる。
営業が自ら生んだ生成AI営業活動支援ツール
『2030年の営業』(日経BP 日本経済新聞出版)
■ 営業現場の課題と生成AIへの直感
「営業活動支援ツール」は、ソフトバンクの営業現場から生まれた生成AI活用プロジェクトです。
始まりは2021年、当時の西日本営業本部の若手メンバーによる「ストラテジー&ソリューション開発室(S&S室)」での取り組みでした。当初の問題意識は、「プロダクト起点の営業から、経営課題起点の営業へ」という転換でした。提案の質を高めるために、営業プロセスは複雑化し、求められる事前準備や情報整理の負担も増していました。
当時、西日本営業部で営業業務を担当していた西原万純氏(現在は法人統括 AIプラットフォーム開発本部 AIインテグレーション統括部 統括部長代行、以下西原氏)、今野心太郎氏(現在は法人統括 AIプラットフォーム開発本部 AIインテグレーション統括部 デジタルセールス推進室 室長代行、以下今野氏)、小幡航己氏(現在は法人統括 AIプラットフォーム開発本部 AIインテグレーション統括部 AI Ready推進室 AI活用推進課 課長、以下小幡氏)は、このような課題感に対して“有志”としてS&S室に参画し、営業活動支援ツールを立ち上げることになりました。
彼らは立ち上げの経緯についてこう語ります。
「コンサルティング営業のように、複雑な課題に対して整理しながら提案するスタイルに転換していこうとしていました。でもそれを実践しようとすると、どうしてもプロセスが増えるし、作業も多くなる。その部分にテクノロジーを当てたかったんです」 (今野氏)








