ジャック・ウェルチ氏
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 起業家(アントレプレナー)とは、特別な才能を持つごく一部の人だけを指すのか。それとも、誰もがなり得る存在なのか――。本稿では『アントレプレナーズ』(澤田貴之著/創成社)から内容の一部を抜粋・再編集。さまざまなケースを通じ、時代を超えて必要とされるリーダーたちの姿に迫る。

 低迷したGEをよみがえらせ、「第2創業」と呼ばれる変革を成し遂げた伝説の経営者ジャック・ウェルチ。その「攻めの経営」を手がかりに、アントレプレナーとして成果を上げるためのヒントを探る。

第2のアントレプレナーズ

アントレプレナーズ』(創成社)

 創業時のアントレプレナーによって成功を得た企業は、その後、創業者アントレプレナーの寿命(経営者としての寿命と人間としての寿命の両方)を超えて存続し、さらに事業転換や事業拡大を経て現在も業界、経済界のリーディングカンパニーとして確固たる地位を築いている場合が多い。

 アップルやマイクロソフトでは創業者のジョブズやビル・ゲイツの時代を終え、次の専門経営者にシフトして随分と時間が経っている。これらアントレプレナーが去った企業は、現在でも巨人企業である。

 ジョブズを引き継いだアップルのCEOティム・クックや多くの巨人企業のCEOを優秀な「経営者」と呼ぶことがあっても、アントレプレナーとは通常言わない。アントレプレナーはあくまでも起業家である以上、起業家・創業者から経営を承継した経営者たちはこの範疇に入らないようである。事情は日本や他の諸国でも同じであろう。

 巨人企業はすでに創業時代に確立された組織や人材を継承し、経営理念やパーパスも企業に埋め込まれているから、専門経営者としての階段を上ってトップにたどり着いた者は繁栄を持続させる義務を負っているものの、非連続的な、大きなイノベーションを引き起こすことは期待されていない。同族企業においても状況は同じで、二世代目以降の経営者をアントレプレナーと呼ぶことはない。