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 起業家(アントレプレナー)とは、特別な才能を持つごく一部の人だけを指すのか。それとも、誰もがなり得る存在なのか――。本稿では『アントレプレナーズ』(澤田貴之著/創成社)から内容の一部を抜粋・再編集。さまざまなケースを通じ、時代を超えて必要とされるリーダーたちの姿に迫る。

 半導体市場で、なぜこれほど劇的なゲームチェンジが起きたのか。AIブームを契機に明暗を分けたインテルとエヌビディアの対照的な歩みをひもとく。

半導体産業のアントレプレナーズ

アントレプレナーズ』(創成社)

 2024年11月S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスは、ダウ工業株30種の新たな構成銘柄に半導体大手エヌビディアを組み入れ、インテルを30種から外すことを発表した。また化学大手ダウも同時に外されている。ダウ構成銘柄は不定期に入替が発表されるが、そうした入替を長期で見るならば、産業や企業の盛衰が一目瞭然である。

 1900年からの100年、あるいは1970年代からの半世紀だけ見ても、一貫して30種銘柄にとどまることができた企業はごく一部にすぎない。

 インテルといえば、パソコンに必ずと言っていいほどIntel insideのロゴシールが貼られているほどなじみのある半導体メーカーである。その中央演算処理装置(CPU)は他社の追随を許さず、半導体業界のジャイアントとして不動の地位を築いていた。

 インテルは1968年に、ムーアの法則で知られるゴードン・ムーアらがカリフォルニア州サンタクララに設立し、半導体メモリ製造からスタートした。その後、世界初のDRAM(随時書込み読出しメモリ)の開発販売を経て、インテルなしでPCは製造できないと言われるほどになっていった。

 インテルの変調はエヌビディアの好調と対照的であるが、AI向け半導体において地位の交代が鮮明となったことを示したもので、ダウ構成銘柄の入れ替えは、そうした事象の結果に過ぎなかった。半導体売上高ではファウンドリのTSMCを除くと、世界一だったインテルも生成AIブームを契機として、両社の売上と経営パフォーマンスは誰が見ても対照的な様相を呈していた。