国立公園・大山の登山口の「モンベルクラブ大山店」
写真提供:共同通信社

 21歳でアイガー北壁登頂に成功し、当時の最年少、最短時間を記録して世界に名を轟かせたアウトドア用品メーカー・モンベル会長の辰野勇氏。辰野氏が28歳で創業した同社は今年で50周年を迎え、全国に120店舗以上を展開する人気ブランドに成長した。本連載では『経営と冒険 辰野勇 私の履歴書』(辰野勇著/日経BP 日本経済新聞出版)の一部を抜粋、再編集。冒険心と起業家マインド、リスクと決断、収益と社会貢献など、著者の実体験に基づく考察やビジネス教訓を紹介する。

 今回は、同社の社会貢献を明文化した「モンベル7つのミッション」、東日本大震災での活動を紹介する。

地域を元気に

経営と冒険』(日経BP 日本経済新聞出版)

■ 人口の少ない市町村に出店し、アウトドア活動の拠点に

 若き日、足しげく通った大山(だいせん)は鳥取県の西部に位置する。ある時、登山口にある、使われていない大山町の施設に出店しないかと当時の森田増範町長から打診された。

 その頃、広島や岡山を含めて中国地方には直営店が全くなかった。標高750メートル、冬は日本海からの季節風を受け大雪に閉ざされる立地で、採算は見込めなかったが、私の大山登山のベースのつもりで、2008年、店舗を設けた。

 かつて大山寺参道やスキー客でにぎわった街並みもシャッターが下りて活気を失っていた。「出店してくれて景色が変わった」と近隣の店舗の主人に喜んでいただいた。

 その後、北海道では大雪山の麓にある人口7800人の東川町、同5000人のオホーツクの小清水町、更に2300人の南富良野町には北海道最大の直営店を出店した。

 他には、秋田県美郷町、にかほ市、山梨県富士吉田市、長野県飯山市、佐久穂町、福井県大野市、広島県坂町、高知県本山町、熊本県南阿蘇村など、アウトドアフィールドに隣接した自治体から要請を受けて出店してきた。