経営者教育に特化した世界トップクラスのビジネススクール、IMD(International Institute for Management Development=国際経営開発研究所)では毎年「世界競争力ランキング」を発表している。2024年度の日本は世界67カ国中38位、経営の実務能力については65位と低いランクにある。

 そうした中、IMD唯一の日本人教授であり、一橋大学名誉教授の一條和生氏は「2025年、日本の競争力は高まるだろう」と言う。一條氏に、競争力強化に向け日本の経営者に求められる変革について聞いた。

※本稿は、Japan Innovation Review主催の「第24回 DXフォーラム」における「特別講:AIの戦略的活用と変革:DXの新局面/一條和生氏」(2025年3月に配信)をもとに制作しています。

2025年、日本の競争力は高まる

 私が今勤めているIMDは、スイスのローザンヌにある経営者教育に特化した経営大学院です。日本では、ランキング調査を出している学校としての認知度の方が高いかもしれません。

 新聞報道でよく取り上げられるIMDのランキング調査には、「世界競争力調査」「デジタル競争力調査」「人材調査」の3つがあります。

 これらの調査は、IMDで学んでいる世界のビジネスリーダーたちに、現在、どの国が事業展開する上で魅力ある国なのかを知ってもらうために行っているものです。

 日本については、2024年度は、競争力総合38位、デジタル競争力31位、人材競争力43位でした。全ての調査において全67カ国中、30~40位台と中間もしくはやや低い水準です。

 しかし、最近IMDの教授間では、「2025年度の日本の競争力ランキングは上がるだろう」という話がよく出ます。実際に、デジタル競争力は、2024年度は2023年度に比べて順位が、1ランクだけではあるものの、上がっています。グローバルな経営者にとって、日本は徐々に魅力ある市場になってきていると思います。投資家にとっても、そうです。

 例えば、アメリカの著名な投資家であるウォーレン・バフェット氏も、2022年の秋から、投資先を中国企業から日本の商社へシフトするようになりました。その影響は大きく、日本の商社の株が上がり、日本の株価全体も上がってきたと思います。

 こうして日本が魅力的だと見られるようになってきた背景には、次の4つの理由があると考えます。