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時代を超えて輝き続ける18社を研究した『ビジョナリー・カンパニー』(1994年発行)は現在も経営者の必読書と言える名著だが、それをさらに進化させた本『愛される企業 社員も顧客も投資家も幸せにして、成長し続ける組織の条件』(ラジェンドラ・シソーディア、ジャグディッシュ・シース、デイビット・B・ウォルフ著/齋藤慎子訳/日経BP発行)が話題を呼んでいる。キーワードは「愛」。企業経営にはおよそ似つかわしくない言葉だが、顧客や投資家のみならず関係するあらゆる人・組織に愛されることこそが経営の本質だと説く。抽出された72社はビジョナリーカンパニー以上の実績を上げており、そこには共通して7つの特徴があるという。本連載では、同書から内容の一部を抜粋・再編集、愛される企業の条件を事例を交えて紹介する。
今回は、世界的に知られるホンダの「ベストパートナープログラム」を例に、サプライヤーとの関係性と質が収益に強く結びつく理由について解説する。
■協力するほうが搾取するより得策
愛される企業は、自社と関わることがステークホルダーの得になるよう心を砕く。サプライヤーのさらなる繁栄を手助けすることもそうだ。
長年、大手小売業者の多くがサプライヤーに毎年のように値下げを要求している。サプライヤーの収益性や存続が危うくなっても、それはサプライヤーの問題、というわけだ。愛される企業ならわかっているが、こうした冷淡なやり方で価格をコントロールするのは近視眼的で、サプライチェーンの健全性を害している。もっと悪いのは、サプライヤー同士に熾烈な価格競争をさせることにつながり、パートナーシップの恩恵が得られなくなることだ。
サプライヤーに毎年のように値下げを要求するのは持続可能な戦略ではない、という認識が高まりつつある。IBMがそれを認識し始めたのは、外部委託が急に増えた1990年代だ。ノースカロライナ州ローリーでIBMの調達サービスを担当しているビル・シェーファー部長が次のように述べている。
「長年、調達に関わっていますが、これまでの調達には、サプライヤーを信頼のおけないどうでもいい相手として扱うイメージがあります。それは良くないし、持続可能でもない調達のモデルだとわたしたちは考えています。IBMとサプライヤーのあいだに、緊密なチームワーク、信頼、分かち合いがなければ、うまくいかないのです」






