ⒸKDDI

 民間企業によるロケット開発、人工衛星を利用した通信サービス、宇宙旅行など、大企業からベンチャー企業まで、世界のさまざまな企業が競争を繰り広げる宇宙産業。2040年には世界の市場規模が1兆ドルを超えるという予測もあり、成長期待がますます高まっている。本連載では、宇宙関連の著書が多数ある著述家、編集者の鈴木喜生氏が、今注目すべき世界の宇宙ビジネスの動向をタイムリーに解説。

 今回は「au Starlink Direct」をはじめとする、人工衛星を用いた最新の通信サービスに注目。先行するKDDIは業界に革命を起こせるのか? 猛追する楽天、NTT、ソフトバンクの現在地は?

KDDI、楽天、NTT、ソフトバンクが繰り広げるDTC開発競争

DTC機能を搭載したスターリンク衛星V2ミニは2024年1月3日に初めて打ち上げられた。ⒸSpaceX

 2025年4月から5月にかけて、国内の各通信事業者がDTCサービスへの参入を続々と発表した。DTCとは“Direct to Cell”の略称で、市販のスマートフォンと通信衛星をダイレクトにつなぐシステムのこと。地上基地局につながらない「圏外」や災害時においても、空さえ見えればどこにいても通信ができる。

 KDDIが4月10日、日本初となるDTCサービス「au Starlink Direct」の即日開始を発表すると、2週間後の23日には楽天モバイルが、「Rakuten最強衛星サービス」を2026年中に始めることを明らかにした。

 すると、ソフトバンクが5月8日の決算会見の場でDTC事業に参入することを初めて明かし、2026年中のサービス開始を発表。その翌日9日にはNTTドコモが、2026年夏にはDTCサービスを提供できると公表した。

 ソフトバンクとNTTドコモは、これまでDTC事業に言及してこなかっただけに、その発表は驚きとともに受けとめられた。両社は衛星を使用したDTCではなく、成層圏を長期間航行する無人航空機「HAPS」を空中基地局とするシステム構築に取り組んでいた。